エピローグ
「なに、アンタたちー。以前より仲良くなってるじゃん」
春休みも終わった新学期、学年は変わってもクラス替えはなくて、放課後の私と小春ちゃんは同じクラスメート女子の面々に囲まれていた。
「いやー、私も銭湯を継ぐつもりなのは変わらないんだけど。でも、もっと世の中のことを知りたくなってね。だから小春ちゃんに、勉強を教えてもらってるの」
「いいことだわ。これから私たち、図書室で勉強するから邪魔しないでね」
小春ちゃんが、しっかりと私の手を握っている。指を絡めてきてて、絶対に放さないという気概が感じられた。
「なんだかなー、仲良く上手くいってると、それはそれで面白みがないよなー」
「私たちも、早いところ彼女を作るかぁ。帰ろ帰ろ」
憎まれ口を叩きながら彼女たちが去っていく。クラスメートも私たちの平和な日常の一部で、ありがたい友だちである。
「じゃ、行きましょうか。素敵な番台女性になるため、私が鍛えてあげる」
「私が後を継いだら、小春ちゃんは常連になってね。銭湯じゃなくても毎日、一緒にお風呂は入れるけどさ」
笑いながら廊下を歩いていく。そこには平和な瞬間があって、少しでも長く、穏やかな時間を小春ちゃんと共に過ごせていけるよう願って。私は幼馴染の手を強く、握り返した。