八丈島のクラゲは砥石を研いで針にするの、13
マレがノーシェイプから外された元球体に近づくと、金属パーツが勝手に変形しはじめた。
「嘘だろ!?」声を上げたのはほかでもない柊陸曹だ。
変形を終えた金属パーツを、柊は目にしたことがあったからだ――。とは言えそれを見たのは仕様書でのイラストだ。記憶違いの可能性も考えたが、ギミックや変形プロセスを見る限り、それは柊の知るものに相違ないように思えた。
「――完成してたんだ。カネザキの『後付けアーマーシステム』!」
「――そんなダッサイ名前じゃないから!」マレが半ばキレ気味に喰ってかかってきた。
「だって、それ、俺が使うはずだったやつなんです」
「知らないわよ、そんなこと」
それもそのはず、都の宇宙人侵略対策室主任、切鍔競から情報を流してもらった際にはまだ、これの正式名称は決定されていなかった。しかし、話が立ち消えてお蔵入りになったはずの企画にまさかこんな形でまみえることになろうとは。
「これはね――『ガチャットウエポン』略してガチャポンよッ!」
「――嘘でしょっ!!?」
マレの発した名前に、たまらず柊が頓狂な声を上げる。あまりにも残念なネーミングに二の句が継げない。ガチャポンって、あのお金を入れてガラガラ回すカプセルトイかよ。
柊が茫然自失している間に、マレはかまわず叫ぶ。
「ゲッティング・ガチャポン・レディー――!」
かけ声とともに丸いボディーをガバッと開いた金属パーツが覆いかぶさり、ノーシェイプの真っ白なボディーを、見た目からして頑強に見えるガンメタルカラーの装甲が包む。
破損していないマニュピレーターにはガトリング砲、破損している側の方にも散弾銃が装備されている。あきらかに不相応な厚さの装甲にもおそらく隠し武器が内蔵されていることはあきらかだ。
拡張型スラスターと、不釣り合いに付けられたスタビライザーは重装化されたノーシェイプの推力を格段のものにしている。
以前柊が見た仕様書の通りであるなら、最高速で日流研の誇るマスドライバー射出時に近い速度が出せるはずだ。
武器のデパートと語って過言ではない装備の数々に、重装を補って余りある機動性。
「それは本来俺のアタックに実装されるはずだったんだ――!」身体の底から苦い汁を絞りだす柊。
しかし同時に、それがスペック通りであるのなら、きっとマレさんを守ってくれる――そうも思った。
これ以上はもう、言葉にならない。
メイクアガールという映画を見てまいりました。メカデザインがカッコ良かったです。内容について触れてしまうとネタバレになってしまうのであえて割愛いたしますが、人が考えるロボットの形ってやっぱりいろいろあるんだなぁと感じました。ドカーン!バキーン!ズダダダダダダっていうのが自分のベースでしたので、ウロコが落ちた思いですw




