八丈島のクラゲは砥石を研いで針にするの、8
「隊長との連絡が遮断された!保!まさか隊長が撃墜されたわけではないのだよな!?」
久能京華1士がそう叫んだのは、マレと柊陸曹が突然の逢瀬をするほんの少し前のことだ。
「僕のレーダーがさっきから異常な点滅をしていて!隊長とは連絡が取れません。それに、この距離でも久能さんとの通信が――もう、危ういです」
田辺2士が必死に現状を報告する。が、想像を超えた事態に後手を踏んでしまう者は、たいてい咄嗟の状況に対応できるだけの柔軟性をその時点ですでに失しているものだ。
これまでが大丈夫だったから――。
が、通じる相手――ではなかった場合。その脆弱の露呈は、致命的だ。
「――ううわっ!」
という半ば断末魔のような言葉を最後に田辺2士は通信を途絶した。
そうなった瞬間、久能1士のとった行動は迅速かつ教習に則った模範的なものだった。
しかし、諳んじれるほど集中して体で覚えこまされた習性がこの場合に限ってなのか、徒になった。
フォーメーションが崩れた場合の最善手は生き残った味方との合流。
ガントルーパーはその行動を選択したことで、レーダー上、隊長である柊陸曹と一直線で結ばれたことになる。
事情を理解しているものであるなら、移動線上に策を講じるのは至極当然のことであろう。
久能1士の目の前に、これまでに確認したことのなかった機影が立ち塞がり、そして間断を入れずそれは持っていた得物でガントルーパーを打ち伏せた。
避けるような時間もタイミングもないまま、久能1士のガントルーパーはその動作を、止めた。
「なんなんだこれっ!聞いてないぞこんなの!」
普段のおっとりしたイメージからは全く想像できない剣幕で怒鳴り散らす小笠原ミルに、普段強気でならしていたダオでさえが、さすがにドンびいていた。
その場に居合わせたのがダオだけだったことがかろうじて幸いだったのかもしれなかったが、ダオの深層に「小笠原ミルヤバい」が刻まれたことは疑いようもなかった。
小笠原ミルは、体裁を取り繕って普段のオトボケ天然キャラに戻る前に、もう一度だけ「聞いてねえぞ!アレを出すなんて!」と歯を軋ませながら呻いた。
同僚機の反応が消滅して初めて、柊陸曹は自身の迂闊な行動が招いた事態に、戦慄を覚えた。
「――おたついてんじゃあ、ねえ!」
マレの一喝がなければ、茫してそのままその場に立ち竦んだままだったかもしれない。
寝耳に水を浴びせかけられた感じで、強制的に意識を引き戻させられる。
「なにがあったんですか」
柊の言葉に「そんなのこっちが訊きたいんだよ!」と放つマレの顔には、本来このタイミングで出してはならない歓喜の表情が、満面に浮かびあがっていた。
書いていていつも思うのですが、設定をしたキャラクターたちが一様に勝手に動き出してしまうという経験を快感と感じてしまうのは、サッカー等の監督に相当する立場の人間からすれば、いわゆる「ノーグッド」なんでしょうか。私は、(あくまで個人的見解ですが)勝手気ままに動き出してくれることにわくわくが止まりません。丁寧に表現しようと努めるあまり、文章が冗長になってしまいがちです←ひどい言い訳w




