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八丈島のクラゲは砥石を研いで針にするの、7

 「マレさん――ですよね!ご無沙汰しております。トルーパーズ隊長、柊陸曹であります!覚えておいででしょうか?」

 緊張感のまるでない犬っころのような喰いつきに、マレは自分が抱いた危機感が杞憂であったとわかった。交信相手に少しでも後ろめたい感覚があるようなら、マレは即座にそれを看破できる自信があった。

 目の前の()()()――は、違うな。マレの直感はそう決定づけていた。

 「――ああ、久しぶりだね。あんたは相変わらず目つき悪い角刈りのままなのかしら?」

 「――いえ、自分の顔には一点の変りもなく、角刈りは自衛官であればもはや正装でありますので!」

 曇りなく、馬鹿に真っ直ぐな感情が破城槌のように襲い掛かってくる。それが一般的にいうところの好意であることは、マレでなくともすぐに気づけただろう。


 「ヒイラギ陸曹――殿は、ここへは何をしに?」

 無人偵察円盤が全機撃墜されたことくらいすでに承知の上であろうと含んだうえでのマレの言葉だった。

 「もちろん、貴女に会いにまいりまし来たんです!」

 マレは一瞬目を閉じて、目の前の機体に搭乗しているであろう青年の言葉を反芻した。どうにも聞き覚えのない日本語に思えたからだ。

 もちろん、柊にしてみれば緊張の高まりのあまり、単純に()()()()()であったのだが、集中していたマレにとって飾りのないその直球はどストライクで胸を衝く。

 「――ッ!そんなことはッ!訊いてない。そっちは今現在、他に敵機の情報はないのかって、そぉいう意味だッ!」

 「?どういう意味です」

 目の前のアタックトルーパー、柊陸曹は本当に知らないようだった。ただ気づいていなかっただけだというのは次の瞬間あきらかになったのだが。

 「――隊長!未確認、急速接近しています。――これはっ!!」

 久能1士との通信が途絶える。とぎれとぎれに田辺の通信が紛れるが、繋いで言葉になるほどの情報量はない。

 

 「なにが起こっている?」さすがに柊も正気に戻ったようだった。冷静になるのは遅かったが、そこからのリカバリーはさすがの早さだ。

 「こっちに研究所から入ってる情報は――多分私たちのほかに敵が来る――ってことよ。そっちの通信が途切れたってことは、最悪、私とあんたで事にあたんなくちゃなんないってことよ!」

 最大の緊張感と最大限の警戒を周囲に放って、マレは尖った言葉を発した。

 「うおおおぉぉ!それって、マレさんと共闘できるってことですかッ!二人っきりでっ!?」


 ――正気かこいつ!


 マレは『イヤな予感値』がギューッと音を立てて、自身の限界値を振り切った音を聞いた気がした。

 そして同時に自分の心を揺らす男はどうしていつもこんなにロクでもないのだろうと、思った。

 

冬の晴れ日を『小春日和』と言うそうですが、まさに今日がそうだったのではないでしょうか。そのかわり天気予報は明日の夜には今季一番の寒気が来るでしょうと予告しています。鞭の前の飴にしてはいささか短い幸福だと思いました。お酒買いだめしようと思って、氷を買いました。だってお酒が高かったんですもん(´;ω;`)

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