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八丈島のクラゲは砥石を研いで針にするの、2

 日流研に出番が回って来たのは、ミンケイバーが大立ち回りを演じた日から中一日置いてのことであった。東京都北区赤羽に飛ばしておいた『ガルダ』の一機が侵略軍の無人偵察円盤をいちはやく感知してノーシェイプへとダイレクトに報せてきたのだ。

 「赤羽かぁ。自衛隊のなんたらトルーパーの方が先についちゃう可能性ってない?」マレが怪訝そうにダオに問いかける。

 なんであんたはそんなに訝しげなのよ?と満面に出して、それでもダオはニヤッと口の端っこを楽しげに吊り上げた。

 「――まあ、()()()()()そうだったでしょうよ?」


 ダオはノーシェイプのコクピット球体につなげていたケーブルを乱暴に引っこ抜くと「薄化粧でいいなら今のノーシェイプは発射まで五分とかからないわよ?自衛隊の()()()()()()()がいくら急いでも一番槍はあんたのものだと思うけど?」

 「やけに自信たっぷりに言うじゃんよ」なかば悪態ともとれる反応を見せながらも、マレもパイロットスーツの前ジップをキュッと上げる。作り物とはいえスーツに押し込められた豊満な胸元はひどく苦しそうだ。

 「ふざけんなよレディーボーイが!」自分の()()とつ比較してしまったダオの目が鋭く尖る。


 マレがコクピットに乗り込んで起動作業をおこなっている合間に、ダオの指示で小笠原ミルがマレごとノーシェイプを吊り上げてマスドライバーに乗せる。

 これまでノーシェイプの出撃には、いったんボディーをコーティング剤を満たした容器に漬け、乾燥するタイミングで吊り上げて、マスドライバーにセットする必要があった。しかしこの新型のマスドライバーでは、筒状に変更された躯体に機体を入れれば、発射口まで移動する間にコーティング作業を施してくれるというシステムに変更されていた。

 「重装とかの厚塗りはこいつじゃ無理なんだけど、思い切って予算組んでよかったわ」作業状況がモニター表示されていく。コーティングの進捗は上々だ。

 ノーシェイプの改良はこれだけにとどまらない。

 コクピットに続いて、筒状のマスドライバーにノーシェイプと同じ大きさの球形のパーツがインサートされていく。パーツはコーティング作業中のノーシェイプと次々に連結されていく。

 「今回は試用含めて二つ――で良かったんですよね?」追加パーツの選択と結合は小笠原ミルの担当だ。ノーシェイプが前に進むタイミングで二つのパーツも同時にコーティングされていく。

 「数珠じゃないんだからそんなにつけなくてもね。本当ならひとつでもいいんだけど、まあ、お披露目だからね」ダオがニヤリと笑う。内心、ミンケイバーばかりに衆目の目が向くのを彼女はよく思っていなかったらしい。

 

 あたしのノーシェイプこそが最強だって教えてあげるわ――!


 ノーシェイプのコクピットに緩衝液が満ちる頃には全ての工程は滞りなく終了していた。


 「――ジャスト四分!やるじゃん!ダオミル!」

 「――名前をごっちゃにすんな!男女!」

 「ノーシェイプmkⅡ、初陣ですよ!しっかり気張ってきてくださいね」


 「こちとら腕が鳴って鳴って仕方なかったんだ!どうせなら円盤だけじゃないデカブツでもなんでも来いってな話なんだよ!ノゥ――シェェイプ、マークツー(mkⅡ)!行って参るッ!目標、赤羽ッ!」


 間髪入れず、マスドライバーが蒼い電磁の光がチリつかせてノーシェイプを射出した。


 「――いぃ逝ってこぉぉい!大霊かぁ――い!」ダオが叫んだ。

 「あの、いつも思うんですけどそのかけ声って、なんなんです?」タイ人ってみんなこういうものなのかな?と、最近考え始めていた小笠原ミルが、なるだけ()()が立たないようにそっとダオに訊いてみた。

 「それはね――」

 ダオがなにか言ったようだったが、声と言葉は、マスドライバー射出の後に遅れてきた残響できれいにかき消えてしまった。



大雪です。電車は止まり車は渋滞してます。これはもう冬眠するしかないんじゃないでしょうか!?皆様方の地域がどうか被害に遭っておりませんようお祈りを申し上げる次第であります。ナムナムぅ

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