八丈島のクラゲは砥石を研いで針にするの、1
ミンケイバーが必殺の太陽光変換ビームを放ったとき、東京の南に位置する八丈島では大きな揺れが起こっていた。
「――ついに来たか?南海トラフ!」
新武装の調整中だったノーシェイプパイロット、マレ・ロムサイトゥーンは、まったく揺れないコクピットの中ではしゃぎ声をあげていた。ノーシェイプのモニターが尋常でない揺れの震源を特定してマレに報せてきた。新しく導入したシステムが強震の原因と場所を割り出すのにそう時間はかからなかった。
モニターの向こう側でダオと小笠原ミルが研究所の床に体を預けて、揺れの収束をうかがっている。研究所はかなり揺れたようだ。
「この位置なら首都直下型じゃないの?あんたはいいわよね、ノーシェイプのコクピットは世界で一番安全だもの」悲鳴にも似た金切り声がインカム越しにマレに届く。
「マレさん。ノーシェイプは地震だって言ってるんですか?」震え声の小笠原ミルは、二十歳をこえてなお変わらぬ小動物感をくゆらせていた。
「ノーシェイプはね――地震じゃないって言ってる。――驚いた。これ、ミンケイバーがやったっての!?」
「――え!?」小笠原とダオがほぼ同時に発した。
ノーシェイプに送られてきた映像は、日流研がここ数年独自に巡回させている飛行型監視機体『ガルダ』を何機か中継して送られてきたもので、現場に近づきすぎた数機のうち、一機は太陽光変換ビームに灼かれたらしい。ミンケイバーの胸部が発光した途端に映像が途切れてしまっていた。他のガルダからの映像もノイズと火柱、それに伴う煙で鮮明なものではなかったが、ミンケイバーの巨体は遠目からのものでもすぐにそれと確認できた。
「でもこの映像じゃ概容だけで全部はわからないわね。でもまあ?こいつが相変わらず物騒だってのには違いないわけよね」
その場に居合わせでもしたらノリでこっちまで巻き込まれる恐れがある、という理由でこれまでノーシェイプはミンケイバーとかち合うような現場への出動はおこなってきていない。
建前とは裏腹に様々な事情があるにはあるのだが、実際のところはわざわざ非力なノーシェイプとミンケイバーを比較されることを望まなかった所長の丸目長恵の厳命にもよるところが大きい。
「あんな人殺しロボットなんかと一緒にやってたらこっちも悪役にされちまうからね」
そんな悪態をよく耳にしたが、もともと丸目もミンケイの佐藤次郎所長――今は神宮寺時宗と名乗っているようだが――とは同門で、ともにロボット工学を極めんとしていたはずだ。
「なあに。この二年の間にノーシェイプだって数段パワーアップしてる。もう誰にも空飛ぶクラゲとか水滴飛ばしなんて言わせやしないんだから」ダオが息巻いた。
光の巨人の出現以来、ぱったり姿を見せなくなっていた黒い巨大獣が今回また出現した理由はわからない。しかし、その二年間というインターバルがあったことで日本流体力学研究所(通称日流研)は確実に巨大獣対策を練ることができていた。
実際、調整は最終段階にまで進んでいる。コクピットにあたる球体のボディー剛性は従来のままではあるが、ひとまわり大きくしたことで重武装の装備にも十分に耐えられる仕様に変更が加えられていた。最たる課題だった貧弱武装は軽量高出力の銃火器を軸に、管制官道成正がどこぞから引っ張ってきた後付けフルアーマーパーツを着装することで解決の筋道が立ちつつあった。
当初「これって、まんまカネザキのパクリじゃん」と鼻で笑っていたマレも、実際に実装してみて、その有用性に言葉をなくしたほどだ。
「――今はさ。正直負ける気しないんだわ。水かさが増した――急いで汲むわよ!」
マレの勘が告げていた。その時は近いのだ――と。
今日、家族が電子レンジでゆで卵を作ろうとして(卵を)爆発させました。爆発しただけならまだしもレンジの底敷プレートまでも破壊してしまい、家ではしばらくレンジが使えません。驚いたのはプレートが中央から放射状に破壊されたことで、まさに「どういうこと?」でした。修行で岩に一撃を加えたみたいなこんなカッコいい割れ方する?思わず笑っちゃいました




