日本2062 有限会社ミンケイの場合の、14
要因はどうあれ、我らがミンケイバーチームの士気は今や最高潮に達していた。ミンケイバーに搭載された謎のゲージが激しく明滅を繰り返したかと思うと、今度はいきなりコンソールの一部がスライドする。スライドした下には真っ赤な色をしたボタン。ご丁寧にボタンの周囲は虎模様の縞で四角く囲んである。
見るからに危ないボタン――。
しかしテンションの上がりきったパイロット五名は、正体不明のそのボタンを誰一人疑うことなく即座に押下した。
全員のコクピットが細かく激しい縦の振動に包まれ、コクピット全体が真っ赤に光る。
『太陽光変換ビームスタンバイ!太陽光変換ビームスタンバイ!』ミンケイを出る際に路上に流れる「特機車両が出動します――」と同じ声のアナウンスが響く。
「なんだ!こんな武器、俺は知らないぞ?」なんとなく流れでボタンを押した鳳が、操作レバーがまったく動かなくなってしまったことでようやく我にかえった。
ミンケイバーの胸部がパカッと左右に開き、ソーラーパネルのように見えるキラキラ素材が露出する。キラキラ素材は胸部を抉るような形で内側にむかって変形をはじめ、それが終わると熱をともなう高エネルギーを生成し始めた。
最初に声を上げたのはケイバ―アーム(自称イカロス)搭乗の大地だった。
「おいおいおいおいおい!なんかすっごい足元が熱いんだけど!」
それもそのはず、ケイバ―アームのコクピット部分の直下が今まさに高エネルギーを収束している場所にあたる。ミンケイバーは色々な意味で搭乗者に優しくないところがある。コクピット内の壁や操縦桿は軍手ごしであっても触りたくない熱さに達しようとしていた。
「耐えろ!ビームが発射されれば一気に涼しくなる――はずだッ!」完全に他人事の鳳は、コクピットのエアコンを全開にして涼んでいた。鳳のいる頭部はさほどに熱が伝わってはきていない。
エネルギーが凝縮されていく。光が――ミンケイバーの最奥に集中していくのがわかった。
『太陽光変換ビーム出力決定してください。速やかに出力を決定してください』再びアナウンスが流れる。
「迷うことはないッ!俺たちはいつだって全開でやってきた!今回だってそうだろみんなッ!」
鳳が音頭をとってさらに士気を強める。若干一名を除いて。
「太陽光変換ビームッ!さぁいだぁい出力だぁぁぁぁぁぁぁッ!」満を持して鳳が叫ぶ!
『太陽光変換ビーム最大出力承認。発射シークエンス』
アナウンスの直後、全員のコクピットの足元が開き、中からひどく原始的なギミックが現れた。
「なにこれ。……ペダル?」
それはあきらかに自転車のペダルに見えた。
「まさかとは思うけど――これ、漕げってわけじゃないよねぇ」アラタが信じられないといった顔をした。他のメンバーも同様の衝撃をうけたようで、ざわつきがモニター越しにも伝わってくる。
中でも特段の悲鳴を上げたのは――言うまでもない大地だった。
「――ウソだろ!?ここ滅茶苦茶暑いのにこのうえチャリ漕げって?――嘘だろぉぉ?」意識せずに嘘だろうを二度繰り返す。しかしこれはどうやら紛れもなくマジな話のようだ。
『発射シークエンスがストップしています。全員全力で――漕げ!』いつにもましてキッツい口調でアナウンスが急かしてくる。
ミンケイバーは本当に搭乗者に優しくない。体力に自信のない左京がヒーッと可愛い悲鳴を上げるのが聞こえた。
わたくしごとですみません。今日、気分転換をかねてドライブに行ってきたんですが思ったほど山に雪が少なくて「ああ、温暖化進んでるんだな」と実感しました。でも帰りに下山する際調子にのって走っておりましたらいきなりタイヤがつるっと滑って怖い思いをいたしました。皆様も運転の際はどうぞお気をつけなさってくださいまし




