日本2062 有限会社ミンケイの場合の、13
「みんな、とりあえず落ち着こうか!」慌てて我に返る鳳の言葉は完全に空を切っていた。
「死して屍拾う者なぁぁぁぁしっ!」ミサイルの乱発で弾薬が底をつくと、脚部担当の太平洋が鰐の巨大獣に向かって飛びあがり、そのまま回し蹴りをお見舞いした。
「ちょッッ!おじさん馬鹿なの!?」蹴り足の右つま先にコクピットのある右京が金切り声を上げた。
ミンケイバーにはある意味搭乗者への優しさに関する配慮が不足している。今回は空振りだったからいいようなものの、万一にでも命中していたら右京の身にもなんかしらのダメージがあったはずだ。
今度はすかさず鰐の巨大獣が反撃してきた。巨大で長い尻尾がうなりを上げた鞭の軌道で横薙ぎに振られる。
「ケイバーボディ――ィぃぃ!ガァアァァァドッ!」鳳が腹に力を込めてその強撃を受け止める。
しかし正確に言うならばそれを受け止めるのは月影アラタのコクピットだ。
アラタのモニターいっぱいに尻尾の影が迫る。
「ウソでしょ!こんなのって――!」思わず目の前で腕を交差するが、それでどうにかなろうはずもない。アラタは戦闘において新たな心的外傷を獲得した。おそらく何トンものダメージがミンケイバーのボディーを直撃した。
「くそう!なんてことしやがる!アラタ!反撃の狼煙を上げろッ!」鳳がこれまで一番の大声で叫んだ。
「――!あんたのッ――せいだろうがぁ!」
攻撃にあわせてカウンター気味にドリル手刀を浴びせようとしたケイバ―アーム大地の手刀軌道が、アラタが身をよじった反動で大幅に逸れ、無防備だったケイバ―ジェットをかすめた。
ドリル手刀はこの世のあらゆるを削ぐ凶悪武器だ。豪快に轟き火花を飛ばす手刀が鳳の眼前いっぱいに投影される。ドリルの切っ先は面体をわずかにこすっただけだったが、その体感恐怖たるや金の玉が極限まで縮みあがるほどのものだ。
「なにすんだこの野郎!」鳳は自分がやったことをすっかり棚の上に放置してマジ切れした。当然最初に因縁を吹っ掛けられた形になったアラタも黙ってはいない。
「あんたが先にやったんだろうが!なんだ『ケイバ―ボディーガード』って!そんな機能最初からないわぁ!」
「はァ!腹筋に力入れろや!ボクサーみんなそうしてるがな!」
「ああぁ!?ミンケイバーはボクサーじゃねえだろうが!そもそもロボットに腹筋なんかねんだよ!」
「じゃあなんだそのボディーの腹筋ラインはよ!飾りか!飾りなのか!?」
鳳の言うように確かにミンケイバーのボディー部分には腹筋のようなラインが構成されてはいる。しかしそれはあくまでも見てくれであって実際の強度があるわけではない。
タイミングよく――いや、この場合最悪のタイミングで神宮寺から通信が入る。
「困難を乗り越えて、強くなれ若人たちよ!」
『――禿げジジイは黙ってろ!』と鳳。
『――髭ジジイは引っ込んでろッ!』とアラタ。
『そもそも貴様のわけわからんシステムのせいだろうがぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
ついには二人がぴたり息を合わせて言い放つ。
ミンケイバー。それは感情が昂れば昂るだけ未知数のチカラを発揮する、人類史上最強のロボットである。神宮司博士の提唱した『ピンチの時にわかる起死回生の仲間システム』はまさにそれを当初から意図的に折り込んだ最凶の破壊兵器にほかならない。
週末ですね。天気は良かったのですがフトコロ寂しく家飲みしております。昔、さんざ飲んだ後に、朝起きましたらすごくいい文章の小説ができておりまして。「小人さんのおかげやぁ」と歓喜していた時期がございました。今では飲んだら飲んだだけ二日酔いですw
皆様も飲み過ぎにはご注意のほどを




