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日本2062 有限会社ミンケイの場合の、8

 巨大獣の出現は二年前に三鷹市で目撃された「薪を背負った男」以来であった。

 色の濃いゴシップが当時しばらくの間流れたが、話題の中心になった光の巨人のことは伏せられ、自衛隊がそれをどうにか撃墜したのだと、公式の報告はされていた。


 巨大獣といえば、ミンケイに所属していた月影アラタを除く四名が巨大獣と相対するのは実に今回が二度目ということになる。

 初見では、巨大なカニの姿をした巨大獣を、必殺武器のひとつ、超電撃メンコで滅茶苦茶に潰して駆逐していた。

 それはそれで一部派手に脚色されて今でも語り草にされている。


 「(かに)の次は(わに)か。しかも、蟹ヤロウよりもイヤな感じをさせやがる」大地駆の直感はあながち的を外してはいない。黒い影のようでありながら異様な臭気と確実に鰐とわかる細かいディティールは、これまでに現れた巨大獣のどれとも異なっていた。


 ぎょろりと強調された目は、見る者をことごとく拒絶させる凶悪な鋭さがあったし、蟹の時には感じなかった()()()()()が周囲を切り裂く風のようにビシビシと機体を震わせてくる。

 

 ごぉぉぉぅぉぅぉぉぉぉぉ――――――――――――!


 実際の鰐がそんな咆哮をあげるかどうかは知らない。しかし目の前に立ちはだかった巨大獣は、それをあげた。空気が裂けて振動が整備のされていないささくれたアスファルトを刺激する。

 唸り声が、都市全体に反響した。

 

 「怖い怖い怖い怖い!」もともとこういったことに耐性のない右京が、咆哮を相殺するように怖い、を連発した。ざっと見、大きさは蟹の巨大獣よりは大きい。

 「南町田のマンションくらいじゃない?」冷静に左京が小さく言葉を発した。

 「それって普通に合身したミンケイバーの倍じゃない?」太平洋が呑気に、あらら~という感じで洩らす。

 「落ちつけみんな。敵が巨大だからといってなにも臆する必要などない。昔から言うだろう、大男、総身に知恵がまわりけり――ってな」心臓が小ぶりなリーダーでも、決める時はきっちり決めてくる。内心ではビビっているかもしれないとはいえ(鳳皇)は決して無責任な性格ではない。

 奮うべき時は、奮うのだ。

 

 「――合身だ!」


 鳳皇の一声でチームの意識がまとまる。


 「合身スタンバイ――!」


 無人偵察円盤が二機そのまま放置されてしまっていたが、正義の勇者は概してこういった状況下にあって些事は見なかったことにする。

 ミンケイの人間もまた総じてそうだ。


 「生きてる人間だけが評価をつけてくれるからな――合身!」と太平洋。

 「久しぶりの臨時収入――でしょ。合身!」悪戯っぽく右京。

 「今日は、巨大獣の謎を解く――合身」左京。

 「俺ははこれからデートなんだよ――合身ッ!」大地駆が苛立たしげに呟く。

 「――合身」月影アラタは感慨を噛みしめるように囁いた。


 「――合身ぃぃぃぃぃィィィんッ!」鳳皇が、雷にも匹敵する鋭い声を、空に向かって放つ。


 ケイバ―ジェットを先頭にケイバ―アーム、ケイバ―ボディーが続く。太平洋のケイバ―足の左右が変形して、長方形のボディーから脚を創り出す。足に連動してケイバ―シューズライト・レフトが電磁の光に包まれ、本来収まる位置へと、繋がっていく。

 脚が完成し、胴が繋がり、腕が収まる。頭部が、ケイバ―アームの接合部位と合身する。

 

 合体した頭部がぐるりと回り、前面にまわったケイバ―ジェットの腹部が観音開きのように開く。


 怒りを湛えた武神の面相を湛えた顔が現れる。


 『見よ!これぞミン、ケイバアァァァァァァァァッセブンッッ!』

 

 『ワイィィィィィィィィィィィィッ!!』


 ガガァっと背景に稲光が見えるほどに輝きを放つ!

 轟音が、惜しげもなく鳴り響く!


 「合身完了ぉぉぉぉぅぅ!さぁさ()持ってぇぇこおぉぉぉぉぉぉぉぃィィィッッ!」


 ちょうどランドとシーをきっちり抑えた背景の空中において、ミンケイバー7Yが合身を完了させた。





冬真っただ中でインフルエンザA&Bの過渡期?外界との接触をなるべく避けていましたのに悪寒と発熱で寝込んでしまいましたのW。読者の皆様もどうぞお気をつけあそばしてくださいませね

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