日本2062 有限会社ミンケイの場合の、5
普段従順すぎるきらいのあった鳳皇がモニターの向こう側で激しく激昂したことは、神宮司時宗を大いに驚かせた。
ミンケイバーは操縦者の声によって実装武器を扱うことが基本コンセプトになっている。
それは単純に神宮司の趣味と歴代の有名なスーパーロボットがそうであったことに起因するのだが、あえて武器名を叫ばせることで搭乗者のテンションを上げる効果を期待している側面もあった。
実際搭乗してみるとその実感たるやすさまじく、決して武器そのものの効果が上昇するわけではないのだが得られる高揚感だけは途轍もないものだった。
その効果が今まさに裏目に出た。本来闘志に呼びかけて気分を高揚させるためのシステムは、今回鳳のこれまで溜めに溜めたフラストレーションに着火させた。
結果これだ。
すでに真赤を通り越した鳳の顔には紫の線が葉脈のように這っていて、目は吊り上がり大きく開いた眼は先ほどから瞬きをすることを忘れている。土建業者の被る黄色いヘルメットは怒りで逆立った髪の毛によって少し浮いて見える。まさに憤怒の形相。
モニターの向こう側にいるのに鳳の怨念めいた澱んだオーラがこっちまでじわじわと送られてきてでもいるかのようだ。神宮司の顔が鳳と対照的に青く凍る。
「ま、ままままあまあ。鳳君そんな怒らんでもええがな」
気圧された神宮司はまるで一昔前のコントを彷彿させる台詞をはからずも口にしていた。
「敵の数は現在九機です。敵の無人偵察円盤は江戸川区と千葉県の一部に広く散っているため、各個撃破のほうが適切だと僕も思います!博士、ここは現場の判断に任せてはもらえないでしょうか」
絶妙の間隙を縫って、月影アラタが会話に割って入る。
第三者の介入によって鳳の表情がわずかに緩んだ。
「よ、よし!鳳君の提案を採用する!各機、速やかに敵円盤どもを撃破せよ」神宮司が大仰に右手を振りあげた。
「ラジャー!」
「――アラタ。正直助かった」大地駆がインカムで個別通信を送ってきた。
――いえ。
決して謙遜したわけではなかったが、そう受け取れるような感じの雰囲気が流れる。アラタは別に今回特に気を回したわけではなかった。
自分の心の底にある懸念が先に立って、あくまでも自分のためにこの戦闘を迅速に終了させたかっただけだ。
「実は俺、今日これから人に会う予定があってさ――早く片づけたいんだ」まだ繋がっているインカムから大地の声がした。
「羨ましいですね――デートでしょう?」
「バッカお前!そんなのどうなるかわかんねえよ」
大地の声が弾んでいる。
「頑張りましょう。今日が終われば明日は機体整備のため休みです。外泊だって、できますよ」
だからバッカお前!どうなるかまだ全然わかんねえんだって――。
アラタにもわかりやすく、大地の気分が浮いているのがわかった。
仲間内で奇しくも意見の合意を見たのだ。お互いの思惑はどうあれ、少しはこれで早めに片づくかもしれない。
いや、片付けなければならないのだ――。




