登場!7体合身ミンケイバー7Y!、の2
鳳が車両を降りて再び地下施設に戻ろうとしたタイミングで、大きな揺れとともに太平洋の操る4-5号機が姿を見せた。いつもの光景ではあるものの、地下施設からの傾斜を出る際、太平のマシンは海上に勢いよく飛び出す鯨のように運転席部分を浮かせて出てくる。全長30mを超えるボディーなのだから仕方がないのだが、車両最後尾が車道に出る時はこれまた盛大な音を立てて運転席がアスファルトに叩きつけられるので、傍目で見ている側としては正直毎回ヒヤヒヤさせられる。
しかし当の本人はそんなことお構いなしで、前輪のサスペンションが着地の際の車重でかかる負荷で悲鳴をあげようがどこ吹く風だ。それどころか着地の振動を楽しんでいる節さえある。町田市の避難による過疎化が進んでいなければとっくに通報されているレベルの話だ。
太平のマシンの全容が地表に出て人気のない広道を右に曲がり停車すると、矢継ぎ早に大地駆の2-3号機が地下施設から顔を出した。こちらのマシンも太平の4-5号機に劣らず巨大なものだが、長さよりか幅の方が広いこのマシンは、どうしてこう設計されたのかという意図が分からなければ、道を走る他の車にしてみれば迷惑以外の何者でもなかった。四車線分か、あるいはそれより少し大きめの車幅は、傍目に見ても扱いづらそうだ。それを苦もなく取りまわすあたりが大地馳の天分なのであろう。
もっと寄せろ、と大地。マイクインカム越しに太平が頷いたのが分かり、4-5号機が前進した。
鳳皇はその様子を横目に地下施設へと駆け降りていく。自分の1号機が施設最奥にあり、他のマシンの排気で巻き上げられた埃やらなにやらで薄い塵の層が積もっている。軽く軍手越しに手で拭い、キャノピーを自力で持ち上げる。
身体にスッポリピタリ合うコクピットは、座った直後に来る静寂で昂る気持ちを正常にしてくれる。
起動スイッチを右手親指で押すが、反応しない。慌てて軍手を外し再びボタンを押すと、今度は指紋を認証してか、次々とコクピット内に色とりどりの光が灯っていく。
『《大鳥鴻》を認識。バイオリズム正常値、発進どうぞ』
「発進スタンバイ、GO!」
フォン、と軽く音がして、機体が少しだけ浮く。浮遊感を感じながら鳳は「この間みたいに底を擦らないようにしなきゃな」と思った。他のマシンよりか随分と小さめな鳳の1号機は、風を巻いて勢いよく地下施設から飛び出して行った。