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転機の、9

 ヘルメットの顎紐を止めてコクピットに乗ると、今しがた耳につけたインカムから「やれるの?」と右京の声がした。


 「やれると思う――自信はないけど」


 指紋を認証させてケイバ―ボディーを起動させる。

 『月影アラタを認識。バイオリズム正常値、発進どうぞ』これまであまり気にしたことはなかったが、このアナウンスの声は、いや、これも――か。


 「全部同じ声じゃん。ざぁつッ()


 「え?なに?大丈夫?」左京のおどおどした声がインカムに届く。大丈夫。心で呟く。


 自分でもびっくりするぐらいに心が晴れやかで軽い。現金な話だ。隠し事がなくなった途端これだ。自分のためだと思って偽ってきた全てのことは、なんのことはない。所詮そんな程度のものだったのだろう。


 悩んで損した気分だ。


 思った以上に世の中は軽い。もちろんなんでも許容されるわけではない。当然だ。全部を赦したとしたらそれは単なる無法にほかならない。でも、自分が思っていた以上に世間を狭く見積もっていたのは間違いない。

 「もっと早く、打ち明けていたらよかった」

 遥ローエングリンはアクセルを踏んだ。彼にしては珍しくタイヤを鳴らす急発進をしてみせる。


 「ケイバ―ボディー。発進します」


 地下格納庫から、長方形の角を面取りしたような姿のマシンが道路へと飛び出した。

 すかさず黄色い回転灯が回り、飛び出し注意のアナウンスが流れる。

 『特機車両が出動します。歩行者はその場で止まって動くな』

 「やっぱり同じ声じゃん」ロウがニヤリとほくそ笑む。どうして今まで気づかなかったのだろう。


  余裕が、なかったんだろうな。ビビってさ、情けねえの。自分は他の人と違うっていつも心で吹聴していたじゃないか。今のこの状況ってのはさ、まさにその渦中ってやつじゃないのか?

 マシンの加速が否応なしに気分を高揚させる。じゅうぶんに速度をつけて、飛ぶ。地面から機体が浮いた瞬間、それまで押さえつけてきた感情が発露した。


 「うおおぉおるおうぅぅうあぁッ!」


 自分は、遥ローエングリンなのだ。これから先はずっと。

眠いです。ポンポンもいたいです。飲み過ぎですよねw

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