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邂逅の、9

 二年が早かったのか、それとも遅かったのか。そのうち嗅ぎつけられてしまうかもしれないという危惧は常に離れることなく遥ローエングリンの内にあった。だからこそ彼はなるべく露出を避けた服装と行動を心がけ、他人とのかかわりをも減らしていた。

 十代の多感な時期をこんな形で過ごすことは本意ではなかったが、ロウは――彼はそれでも仕方がないことなのだと割り切っていた。いつどこで、それこそ何かの拍子で自分が光の巨人になってしまうかわからなかったからだ。父を詐称する遥迅速が自分を探すとすれば、それは愛情とか親愛の情とかいった豊かな感情からではなく、自分自身に利用価値を見出しているか監視かなにかのためであろう。


 逃げ出した当初は夜もまともに眠ることができなかった。新たな名前を手に入れた時でさえしばらくは自分の後ろに人が立っているだけで落ち着かなかった。住み込みの日雇いバイトを転々としながら少しずつ都心から拠点を移して行き、ようやく少しの金が溜まったタイミングで「ミンケイ」のドアを叩いたのだ。

 免許こそなかったがこんな時代だ。バイトでは重機を扱わされたこともあった。もちろんロボットの操縦に経験はなかったが宇宙人との関わり合いをまったくのゼロにはしたくなかった。

 光の巨人にもう一度なってみたいと思ったわけではない。宇宙人の乗ってきた巨大獣と呼ばれている――鳳輦(ほうれん)について自分がなにかしら関係していることがある――それならばその関係を自分は知りたい。そう思った。

 自衛隊のトルーパーズ、柊陸曹たちを頼る選択肢もあったが、国の官僚である切鍔――あの男に関わりあいたくはなかった。八丈島に拠点を持つ「日流研」は場所的に遠すぎるうえ逃げ出す環境としては不適格だ。残った選択肢が「ミンケイ」だった。

 

 こんな形でよもや自分が社会人になるなんてロウは思いもしなかった。ただ、足を踏み入れてみると変わり者は多いが自分に馴染みやすい環境であることはわかった。

 神経質だが頼りがいのある鳳。活発で気の合う大地。年齢がまったく読めない謎多い男、太平。祖父の血をあまり濃く受け継がなかった双子の姉妹、左京と右京。


 仕事やシフトが変則的過ぎて慣れるまで時間はかかったが、その多忙さが追手に追われている恐怖を忘れさせてくれたのも確かだった。

 やがて一年が経過して、ロウ自身仕事に慣れてくると、「もしかするともう誰も自分を探さなくなっているのではないか?」という楽観的主観も受け入れられる余裕が生まれていた。それでも彼は完全に気を緩めることはしてこなかった。アパートにはいつ逃げても大丈夫なだけの備えはしていたし、窓には緊急逃走用の仕掛けも作っていた。


 迅速がどこまで自分について調べをつけているのか。自転車を全力で漕ぎながら思考を巡らせる。たまたま偶然見かけただけとは思い難い。アパートに先回りされていたことを考えると、すでにこちらが偽名を使っていることも周知なのかもしれない。そうなれば「ミンケイ」に所属していることもバレてるということか?様々なことが疑いの要素に変わっていく。もしかすると今日の朝会社の前で会った謎の女も迅速の関係者で、自分の所在を確認するために立ち寄ったのかもしれない。

 会社に向かおうとした足を、止める。事情を説明すればあの博士のことだ、匿ってくれる可能性はある。だが――!咄嗟にあの家族の顔が浮かんだ。巻き込んじゃ駄目だ。真摯にそう思った。


 最悪、また誰にも何も告げることなく去らなければならないのか――。


 浄然薫梨(じょうぜんかおり)寺門防主(てらかどぼうず)。二人の顔が脳裏をよぎる。

4月になると続々新番組が始まって心が浮き立ちますね。でもいったん録画できなかった番組を見る機会がそこなわれると、一気に醒めてしまう悲しさは否定できません。仮にオンデマンドで見ることができたとしても「録画したかったんだよ!」という心の声はいつまでも引きずることになりかねません。私だけですかねw

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