ノーシェイプ、あるいはシェイプレスの事情、の6
事態が動くのは大抵、「そうと決めた時」か、「油断している時」らしい。
「マジか!それっていつも臨戦体制ってことじゃん」と吐き捨てたマレの意見はこの場合正しい。
地球侵略軍の動きが活発化したという情報が入ったのは今からほんの数分前のことだった。
小笠原ミルがレーダー監視をおこなっていた際、侵略軍の偵察無人機が複数機確認されたのだ。場所は東京都港区。
「ガセじゃないんでしょうね!?」眼鏡の縁をグイッと押し上げてダオが状況確認のため戦略モニターを覗き込む。確かに無人機らしい機影が確認できた。
先日に引き続きまたも東京都。これまでもこういったことの皮切りは東京都内が多かった。侵略騒ぎからこの方、人が大量に地方に避難したにもかかわらず、侵略軍が偵察機を投じたり大型獣を送り込む先は東京が断トツに多かった。
腐っても首都ってことかーー。
「なんかさ、昔の特撮ヒーロー物もさ、地方ってあんま襲われないよね」そう呑気に笑うのはマレだ。すでにコクピット内でスタンバイ準備をしている。
しかもアレ、なぜかそこらへんの近所?落としたら作戦成功したみたいに言ってるけどさ、47都道府県同時に作戦決行したりはしないじゃん?マジわかんなくね?
ダオはマレの讒言を完全に無視してコーティングコーディネートをシミュレートしていた。横文字だらけだが、早い話、今回どんな武装でノーシェイプを送り出すか検討をしているということだ。
都心なんだから動きやすく軽量、薄めのコーティングで充分か?それなら出撃までの時間もそうかからずに済む。
「よし決めた!マレ。都市戦仕様で組むからね。データはそっちで確認して!」
「私の意見は聞く気なしかよ!」
「あたしが一番ノーシェイプのコトわかってんのよ!」
ヘイヘイ。マレはダオから転送されてきたデータを覗く。
「ちょお!都市戦仕様!コレまた武装ないやつじゃん。マシンガンだけじゃ無理だって!」
「アンタこそ管制官の話聞いてなかったの!?なる早で現着しろって言われたでしょうが。発進一時間かかっても良いわけ?」
「そりゃ、ダメだけどさぁ」ダオは根に持つタイプだ。ミーティング前にマレに言われた事を恨み節のように返してくる。
でもさぁ、事件は現場で起きてんだぞ?喉元まで出た言葉を呑み込む。
「ええい!私は知らないからな!」
苦し紛れに言葉を絞る。




