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日流研の事情、の4

 どういったいきさつで、そしてどのタイミングで()()()がこの国の中枢に食い込んだのか――それをまともに調べるあげるような切れ者は今現在この国にはいない。あまりに性急だったメインコンピューターの差し替えを疑問に思った人間がごく少数存在したが、それまでよりも格段に速い情報処理と演算能力を見せつけられて後は「時代は進んだのだな」などという実に陳腐な理解を示して疑問を捨ててしまった。それだけ目の前に現れたものの利便性は高かった。

 

 国のトップが認めて、それが極めて自身や自身の環境にとって有用であったならば、人はそれまでの意見を簡単に変えるし、また盲目にもなる。 


 自己進化型AIを基軸にデータと呼べるものすべてを片っ端から喰らい、消化という名でカテゴライズして並べる。時代の流行を迅速に捉え、過去を網羅したコンピューターに怖いものはなくなっていった。今のI.P.Uは主電源を切られても自力でリカバリーするし、自分に悪意を向けてくる存在を情報戦だけで殺すこともできる。

 一日の間に不特定多数の人間から無量大数に近い情報検索をされ、それらをすべて把握できるようになると、赤裸々になった個人情報はそれだけで個人攻撃可能な凶悪な武器と化す。検索する側はよもや自分の情報をコンピューターにストックされているなどとは露ほども考えていないから、検索の都度自分にとって適宜な情報を差し出されるとその便利さにやがて思考をおろそかにしていく。

 そうして、誘導されているとも知らず、機械のいいように決められた箱に封じられて(カテゴライズ)いくのだ。


 かくいうダオも、自身の趣味が高じて開設したサイトに舞い込む客を手練手管で翻弄して楽しんでいる。情報収集をされているという危険性も承知の上だが、今まともに稼働しているコンピューターネットワークはI.P.U管理下のものだけだ。割り切って、さらにきちんと気をつけて使用している自覚をもって使用はしているつもりだ。

 

 『タイの星の恋愛相談』。ダオの開設サイトだ。情報を収集、分析に長けた彼女の視点から導き出す答えはそこそこ的確だったこともあり、開設三年目を迎えてなお存続の危機なしに継続できている。固定客もいて、もちろん主業として成り立つほどではなかったものの副業としての収入は十分なものがあった。


 今日も今日とてサイトを開く。通知――あり。


 今日の客は――またこいつか。鍋保(なべたもつ)。サイトを立ち上げた時からの常連で、二年位前から職場の先輩の恋愛相談話を受けている。――記憶を辿る。


 たしか職場の上司ふたりの恋愛事情について――だったわね。相談料を踏み倒す輩も多い中、キッチリ金払いのいい上客ではあったが、自分の相談をほぼしてこないという変わり者。

 

 ええと。前回は確か――自分一辺倒で気のまわらない職場の朴念仁上司に懸想した同僚女性の前に、突然現れたワイルド系の女に朴念仁が心奪われる――だった――わね。その時はたしか――。


 「ほっときましょう。蚊に刺されたようなものですぐにワイルド系の女性のことは忘れるでしょう。いずれしばらくして熱がぶり返すかもしれませんがどちらにせよ同僚女性に気持ちが傾くことはないでしょう」


 そう返したはずだ。相談内容を見る限り依頼者の鍋保が同僚女性に気があるのはあきらかだったから、「大丈夫よ~。放っとけばクールダウンしてあなたの方に切り替えてくれるかもよ?」の期待を込めた体で綴ったのを覚えている。


 その後進展があったというのだろうか?相談内容に目を通す。


 「――その後先生の仰る通り、関係が途絶えていったん落ち着きはしていたのですが、二年ぶりにそのワイルド系女子が現れて焼け棒杭に火が着きまして」


 おいおい。朴念仁の先輩とやらも大概だけど、せっかくチャンスがあったのに同僚の女性と鍋保も関係そのままって。誰もくっつかないまま二年が過ぎたってか?


 なんだこの状況――?


 この相談があながち自分に無関係ではないということに、まだダオは気がついていない。二年前から関わっていてなおこの体たらく。世界は思った以上にアヤがついているのかもしれない。

ごめんなさい。今回もあとがきお休みします。こういった話題取りあげてほしいとかございましたらご一報ください。答えられる範囲でお答えしようか考えますのでw

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