武蔵野TVの事情~有野ナンシー(31)の場合の、7
浄然薫梨、寺門防主。二人が探している同級生は遥・ローエングリン、と。名前をメモして、今度は有野ナンシーが首を傾げた。
「探してる子って、ハーフか何かなのかな?」映像で確認した少年は髪の色こそ明るめだったが、骨格はアジアンの域を出ていない印象があった。それなら二人の探している同級生の線はここで消える。行きがかり上ふくらませた話もこれ以上追求せずに済む。
「いえ。遥は普通に日本人だと思います。名前だけ、少し変わってて」浄然が慌てて有野の言葉に返答した。
「少し前に流行った『キラキラネーム』ってやつだ」
「――いえ、別にそう言うわけでもないんだと思います。遥のお父さんのセンスなんじゃないかって――思うんですけど、ねえ?」同意を隣りに控えた寺門に求める。
「確かに。父親も『迅速』って珍しい名前ですし。一族皆、もしかしたら名前になにかしらのこだわりがあるのかもしれないです。まあ、珍しいっていうか、変な名前って俺が他人のこと言うのもなんですけど」
寺門――防主。確かに彼の名前もかなり特殊だ。照れ笑いに少し好感が持てる。
遥『迅速』、と。閉じかけた手帳を再度開いて名前をメモする。
「ちなみにお父さんの連絡先とか、知ってたりする?」あからさまに個人情報の開示を要求するが、二人ともさすがに親の電話番号までは把握してはいないようだ。ほぼ同時に首を横に振る。
「――ああ、でも前にあいつ、親父さんは天文台にいるって、たしか言ってたような」
「あ。言ってたかも」
「ふうん。天文台――ね」
この辺りで天文台といえば一か所だけだ。有野は「天文台」と遥迅速の名前の横に書き足した。
この件、もしかすると結構根が深いのかもしれない。有野の直感が、また動き出すのを感じた。
――あれからもう二年経つ。あの時の二人は高校を卒業したのか――あるいはもう一年あったりするのだろうか。あれから何回も手帳を変えていたが、不思議なことにあのネタを記載した手帳だけは、どこへ行く時でも常に彼女は携帯していた。おかげで、当時は新品然としていた表紙も、中に挟んだメモに貼ったテープもボロボロになってしまっていた。
「ずいぶんと古くなってしまったわね」
大地駆が――酒が回って眠くなってしまったのか、先ほどからずいぶんと静かになってしまっていた。頭を揺らして舟を漕いでいる。
ハンドバッグから手帳を取り出して、いとおしそうに眺める。手帳には有野がそれまで遭遇してきた様々な取材経過が細かに記されている。すでに終わった取材案件もあれば、打ち切りになってしまったものまで内容は多岐にわたる。どれも彼女にとっては思い出深いものだ。手帳をひとたび開けばその時あった事柄を今でも克明に思い出せるほどに。
『光の巨人案件』
二年前のこの案件は完全に行き詰まってしまっていた。他の取材用とは別にしたこの手帳には追加メモはほとんど記載されてはいない。それでもようやくたどった細い糸がいまこうしてまだ繋がっている。
眠っている大地駆がそのまま放置したスマートフォンの写真を、自分のスマートフォンで撮影する。カメラにアラタ――月影アラタ、今はそう名乗っている少年の姿を確認する。
「もう忘れてるかもしれないけど、お姉さんはまだ覚えてたりするんだな、これが」
局に戻り次第、連絡を取ろう。もちろん相手はあの時の高校生二人だ。
「ウィキッドふたりの魔女」見てまいりました。ほぼ三時間。前日寝不足だった私は内容がトーンダウンした瞬間、短期の眠りをとること数回。出演された役者の皆様方に多大な失礼をしてしまいました。でも、いったん起きてしまうと目が離せなくなる内容で、字幕版で良かったなと思うことが多かったです。驚いたのは最初と最後で、あえて内容には触れませんが――続編アリなんですね。びっくりですw




