インターミッション 切鍔競の場合の、4
「――ちゃんと聞いてくれてますか?丸目所長」
切鍔競の声で我にかえる。
ずいぶんと昔のことを思い出したものだ。
「あたしも随分と老いたもんだ――」ふふふ、と意味ありげに笑う。
「――で?なんだっけ――?」
「誤魔化さないでください。当代の迦具夜姫のことですよ僕が伺いたいのは――」
「――知らないって言ったろ?もう三十年も昔の話だからね」
「四十年、でしょう?」
「細かいねぇ。そんなだから未だに独り身なのさね」
切鍔の作り笑いが消える。どうにも触れられたくなかったことだったようだ。それを見て丸目がたたみかける。
「どうにも悪かったね。年を取るとどうしても本音が出ちまう。なにせお迎えがいつ来るかわからない身の上なんでね」
「話す気は――ない、と?」
「いったいなにについて聞きたいのか――あんたの方の本音が見えないのさ。少しくらいはこっちに譲歩したらどうだい?そうすりゃこの老骨の口も或いは滑るかもしれんだろう?」
会話の主導権を取られたか。流石に一筋縄ではいかない。『女傑』の二つ名は伊達ではないということか。切鍔はふっ、と笑みを浮かべて両手をさも降参ででもあるかのように開いて見せた。
「僕はその女を真正のルナリアンじゃないかと疑っているんですよ」
「――馬鹿言っちゃいけない!あの女がルナリアンだって!?ルナチュリならばまだしもっ!」その言葉は丸目にとって完全に失言だった。しかし、それほどに切鍔の発言には強い誘導性があった。
「――ルナチュリ、ね。やはりあなたは完全に何かをご存じだとみえる」
日本には平安時代を舞台にしたと思しき有名な物語がある。
「竹取物語」がそれだ。
竹取の翁が竹藪に赴いた際に見つけた光る竹の中から生まれた一人の姫が成長していく話だ。日本人であるならおそらく知らないものはいないであろう。
美しく育った姫が周囲を悲喜交々に巻き込んで、最終的に月へと還っていくという――あれだ。
「かぐや姫の話はルナリアンを示唆したものだと、僕は思ってましてね」
「――バカバカしい。今が西暦のいつだと思ってるんだい?八百比丘尼じゃあるまいし。大体、あたしが初めてあの子に会った時だって、どう見積もっても十代の顔形だった。かぐや姫と言ったらそもそも西暦の三桁生まれじゃないか。今度ばかりはあたしも――あんたの方がどうかしてると思うがね?」
「――そこで遥博士が絡んでくるわけですよ。彼の研究内容――あなたは十二分にご存じでしょう?」ニヤリと、確信めいた笑みを切鍔競は、浮かべた。
一日温かい日でしたが、油断ならないのが最近の気象です。毎年温暖化によって北極ないし南極の氷が溶けていく話を耳にしますが、私が驚いたのは、仮に北極の氷が溶けたなら、増えた水かさがどこでその影響をもたらすのか、という話でした。南極もまた然りです。さて、この話の続きが気になる方はぜひ次の話をご覧になってくださいw(答えを載せるかは気分次第です。なにせネットで調べられますものね) ※ヒント! クリープ現象というんですよw




