インターミッション 四方山話の、1
四方山ロボット研究会。それはカルマラビーと佐藤次郎(現神宮寺時宗)が大学時代に創設したサークルで、後に飛び級で入学してきた丸目長恵と遥彼方を加えた際にそれまでの「ロボ研」を改めた名称である。
四方山という名称も、居合わせた四人が四人とも尖った個性の持ち主であり、互いをリスペクトしながらも方向性を異にしたことから洒落で決めたという実に雑なものだ。
佐藤が合体ロボットを熱く語り、丸目は極地であっても稼働できるロボットを探求すれば、人間並みの動きを巨大にした状態で維持しようとカルマラビーが説き、脳だけを残して体を乗り換えることのできる不老不死型のロボット制作を遥は提唱した。
「合体だよ!地上から見上げて圧倒的な存在。それは人間が古くから信仰してやまない山への信奉にほかならない。武器の格納だって大きければいくらでもできるし、複数のパイロットがいるから一人で悶々とせずに済む。そしてやっぱりロボットといえば合体さ」
「ああ、ならでっかい段ボールででも作ればいいんですよ。今の技術なら中身空っぽにすれば武器は詰め放題の巨大ロボットだってできるでしょうしね。時代はね、人が身ひとつで行けないようなところでの未知の探索をこそ求めてるんですよ。合体なんて非効率的にもほどがあるって、少し考えればわかりそうなもんじゃないですか。まして複数のパイロット?仲間割れにでもなったらどうするんです?人間なんてのはね、二人いりゃ争えるように出来てるんですよ」
「――佐藤の言う合体があながち悪いとは、私は思わないがね。たとえば分離して探索に送ることもできるし、致命傷を負った時はそこだけ切り離せばいいわけだからね。それに丸目クンの話も私は好きだね。人間である以上環境の適応にはずいぶんかかる。それを補って人間が到達し得ない場所に行くということは人類の進歩にほかならない」
「そうでしょうとも。流石カルマはわかってる!」
「そうですよね!流石カルマラビー先輩はわかってます」
はからずも声が揃って、佐藤次郎と丸目長恵は互いの顔を見やった。
「先輩は、あたしの案が素晴らしいって言ったんです!人類の革新だって!」
「はあ!?ヤツは合体ロボの汎用性の高さについて最高だって言ったんだよ!」
大学のそばにある安い居酒屋で熱い問答が展開されるのは見慣れた光景だ。居酒屋側も店に損害が出ない限り基本、放置している。多くの勤め人もよくくだを巻く居酒屋ならではの配慮でもある。
「お前は話に入らないのか?」
騒がしい環境下にあって、静かに一人ウイスキーを飲む男がいた。カルマラビーの声に伏せた目をゆっくりと上げる。
「いいんですよ。僕の目指すロボットは巨大でもなければ極地にも行きません。ひたすら延命するだけのつまらないヤツですから」
遥彼方――。普段から口数が少なく何を考えているのかわからないことが多いが、カルマラビーは彼の研究だけは、ほぼ手放しで称賛していた。いつか宇宙に進出する未来が来るとして、彼の研究はその一助となり得るのがあきらかであったからだ。
人は、生まれた以上――死ぬ。
しかし、この遥の研究が成功するとしたなら、外宇宙に出た自分が自我を持った個体として宇宙を、それこそ永遠に周回することができる。それはカルマラビー自身の野望と直結した希望だ。
そのことに比べたら、合体ロボだろうが局地専用の機体だろうが、そんなものは正直どうでもいい。いくつも替えのきく身体があれば、そこからやり直せるのだ。それに勝る研究などありはしない。
カルマラビーにとって不都合な事案が発生したのは、そのわずか数日後のことであった。それまで順当に回していたはずの歯車が少しずつ逸れていく――感触があった。
三連休が、終わりますね。ばいざうぇい。ネットで新しいガンダムのプラモデルの画像がありまして、ふいと見入ってしまったのですが。正直映画を見た時フレンチブルドッグみたいな顔のガンダムに首を傾げてしまいまして。ただ、プラモデルの造形でいざ立体化したものを見るにつけ「これはアリか?」などと揺らいでしまいました。見識、偏見、先入観。変革には手探りが肝要ですよね。私もこの作品が最近のありきたりになってしまわないよう鋭意努力いたします所存ですw




