インターミッション 切鍔競の場合の、1
謎の機体を取り逃がしたという報告は関係各所にただちに知れる形となっていた。仕方ないという見解が大半であったが、中には自衛隊の無能をここぞとばかりに声を高く語る者も出た。
しかし報告されたヤック(公式名称:対外X)が流暢な日本語を話し、おおよそ日本の伝統武具である刀や十文字槍の武装をしていたという柊の報告仔細を見るやどの部署の上官も往々にしてその口を貝のように閉ざした。
「敵は宇宙人ではなかったのか?」
柊陸曹のまとめた報告書には、敵が日本人である可能性についての示唆がされている。添付されてきた戦闘中の映像に映る黒い敵は、ともすれば日本の鎧を纏った武者に見えないこともない。関係各所がこぞって閉口したのには、対外Xがもしも自国に関連があるとすれば――という一縷の可能性に対して、自身の組織を完全把握できていない内情を勘ぐられれば『藪蛇』だと直感したからに他ならない。
組織を完全に把握し徹底できているなどと豪語する所から足をすくわれるのだと彼らの経験則が警告を出しているのだ。
感嘆の声を上げたのは他でもない、藪をつつかれてもまったくいに関しない変人集団なロボットをよく知る科学者や技術者たちだ。
「どういう原理で動いている?あれははたして機械と呼べるのか」
革新的な敵、ヤックは彼らにとっては好奇の的だ。
「あの動きはまるで人間だ。似たものをあえて挙げるとするなら二年前に出現したアレ――何と言ったか――」
「光の巨人か?」
「――そう、まさにあのディテールをそのままトレースしたものだと思うね」
「あれはロボットではない。あきらかに筋肉組織があってこその動きだったと認めたはずだろう。あれは――そう、生き物さ。ウルトラな、マンだ!」
「――馬鹿馬鹿しい。あの映像でそこまで断ずるなんてのがそもそもナンセンスなんだよ。君はあれだ。旧世紀のネス湖の主を信じている――そうだろ?」
「対外Xは映像を見る限りどこかから武器を生成している節がある。それは巨大獣の黒いモノとなにかしら関係があるんじゃないのか?」
「――巨大獣の黒い粒子のことか?あれと関連しているなら以前現れた光の巨人が――あんたらの言うウルトラな、マンが、変容したのではないのかね?かつて光の巨人は巨大獣の黒い霧を吸って巨大化したじゃないか!あの映像はフェイクではないと結論が出たはずだろう」
興味深い話が延々と続く。しかしどうして有識者という名のついた人種は、こうも結論をこねて並べて潰してまとめて、を繰り返すのか。
有識者会議に参加した宇宙人侵略対策主任出納係担当、切鍔競は、会議中であるにもかかわらず多めの胃薬を流し込んだ。
そのうえでギークな馬鹿どもに一喝する。
「どうやらお集まりいただいた方々はどなたも物事を対岸の火事のように思われているようだ。議論すべきは対外Xの正体を詳らかにすることではない。この国の、危険だと思われるものについて排除の方法を考えてくれとお願いしているのです。どなたかいらっしゃいませんか?あれなるものを排してくれる勇者か、あるいはその方法を――!」
これには参加した有識者の殆どが議論をやめ、押し黙った。
殆どから逸脱するものは、この機を見逃さない。
三連休!籠城するためのお酒と食料は買い込みましたけれど、映画もたくさん見たいのですけれど!実は今日(正確には昨日)「誰よりも強く抱きしめて」というものを見てまいりました。時間的にそれ以外はまらなかったので仕方なしに見た映画だったのですが、これがびっくり。アイドル=大根役者という偏見が吹っ飛ぶものでした。内容にはあえて触れませんが主演女優の某アイドルグループの方の演技が、いやあ上手いのなんの。引き込まれてしまいました。原作を知る方からすればからすれば、む、と思うこともあるでしょうが、一見の価値ありと私見ながら思います(実は冒頭少し寝てしまいましたけれど)w




