八丈島のクラゲは砥石を研いで針にするの、20
――正直言ってモノが違う!
それが柊陸曹が得た最初の感想だ。よく確認もせずにフットペダルを踏んだのが間違いだった。急加速に首がシートに叩きつけられた。ぐッ!と呻くが、加速した機体はそんなことを赦す暇も与えてはくれない。正面モニターが生きていたなら、恐怖のあまり失禁していたかもしれない。両サイドの、まだかろうじて機能しているモニターの景色が認識するより先に後方へと流れて消えていく。スラスターゲージはレッド。それはアタックトルーパーの認識外の速度が出ている表示だ。
「この速度帯の中をこなしてるのか、あの人はッ!」
日流研のマレ・ロムサイトゥーン!恐るべし!
身体が速度から来る圧で張りつき、腕が上がらない。加えて適度に損傷した機体が耐えらえずに悲鳴をあげている。今にもパーツのどこかがすっ飛んでいってしまいそうだ。
結構な距離が敵機とはあったはずだった。おそらく距離換算で2キロ半から3キロ。しかしものの2秒足らずで、この金色の殻を被った悪魔の機体はその間を詰めていた。慌てて減速するが、思った以上に速度は落ちない。タングステン・ナックルが照準を自動でヤックに合わせた時には、柊機はすでにヤックの横を通り過ぎていた。
「ナックルの照準を決めてからでないと拳もふるえないじゃないか!」
オート照準をマニュアル操作に切り替える。この後付けアーマーシステムは自衛隊の各種トルーパーやノーシェイプのみならず、多くのロボットに適合できるようシステムが組まれているようだ。トルーパーのシステムに合わせて操作の切り替えができるよう配慮されていた。
ふと、柊の目に奇妙なものが止まる。
しかしさすがにそれを考えさせてくれる時間を敵は与えてはくれなかった。どこから取り出したのかヤックは槍を携えている。しかも――。
「十文字槍とは恐れ入る!」
攻撃を避けたつもりの柊の金色の装甲に火花が散った。
槍先はかろうじて躱したが、槍穂の根元から三叉に分かれた刃のひとつが殻を掠めていた。
くるくると穂先を回転させて突きの構えをとるヤックからは、濃厚な手練れの気配が漂ってくる。
せめてこいつに銃火器のひとつでもあれば――。今やマシンガンは装甲の下だ。手甲で覆われた手では握ることも適わない。銃を使うにはこの外部装甲をパージするより方法が思いつかなかった。
だが、それは論外だ。
柊は覚悟を決めた。
「服を体に合わせるんじゃない、体を服に合わせるんだ」陸将、藤堂鷹虎の声が聞こえた気がした。
今季最大の寒波がまた来たとニュースで伝えられていますが、今期最大の寒波が二度目の場合でも、そう言っていいのかどうか私には判断が出来かねているところです。その言い方だったらあと何回か寒波が来ても同じように言うの?じゃあ今季最大ってどれがそれなのよ、と。同様によく「全米が泣いた」という映画のCMが流れますが、アメリカ人は「全員泣き虫」あるいは「感情不安定」という風に思ってしまうのは私の性格のゆがみのせいなんでしょうかw




