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八丈島のクラゲは砥石を研いで針にするの、18

 柊陸曹の直感は的中していた。ガチャポンシステムと名前こそ変わり果ててしまっていたが、カネザキの後付けアーマーシステムは基本コンセプトをそのままに日流研のノーシェイプに流用されている。

 「基本コンセプトがそのままなら、もともとはこっちのために(あつら)えたものだ――!」

 

 使えない道理はない。


 金属パーツがアタックトルーパーを認識して、覆いかぶさる。ガンメタリックのボディーを()()()いかつい装甲が包む。


 「――なによそれ!?」


 久能が悲鳴に近い声を上げたのも無理はない。ど派手な金装甲はゴリラの胸襟を彷彿とさせるほどに重厚で立体的。腕に装着されたパーツもボディーのド迫力に負けず劣らずといった(てい)のゴツさがある。そのくせ脚部パーツは存在しないのかアタックトルーパーのままだ。

 一昔前のアメコミの主人公ばりに上半身マッチョのアタックトルーパーに、戦闘中であることも忘れて久能が「なによそれ、格好悪すぎでしょ!」と爆笑している。

 「なんだ!どうなってる!?」正面モニターが死んでいて自分の姿が見えない柊がコクピットで喚いている様子が久能の笑いをさらに加速させた。

 「今、あなたこんな感じだから」

 画像が久能からサイドモニターに届く。


 「――なんッじゃこりゃぁぁぁ!」


 全身金色のヘルメットを被せられたようなアタックトルーパーにもとの面影はない。

 「これじゃ金のカリメロじゃねえか!」

 「銀なら五枚、金なら一枚よ」久能の笑いは止まる気配がない。

 「茶化すな、久能!」

 

 ええい、と半ば投げやり気味に、それでも柊は装備した追加武装のスペックを模索する。装甲のカメラが追加されたはずだ。コンパネ(コントロールパネル)がやられてもそれが使えないってことはないはずだろ。

 「――落ち着いて。やられてなければ予備の小型パネルがいくつかあるはずでしょ?コクピット側面の絶縁体ボックスとか確認したの?」ひとしきり笑い終えて落ち着いた久能が的確なアドバイスをしてくれた。言われるまで柊もその存在を忘れていた。非常時に備えてトルーパーのそこかしこには緊急用の絶縁体ボックスが用意されている。

 手を伸ばすとボックスが触れる。ケーブルをつなぎ、追加装備のカメラと接続する。トルーパーの緊急時のシステムがいつのまにか作動していて、機械にそう詳しくない柊でも取り付けに多くの時間は要さなかった。

 追加装甲で完全に塞がれた有視界の代わりに15インチの小さなモニターが正面風景を映し出す。

 いささか心許ないが、これでまだ戦える。

 しかし、追加装備の一覧を表示させて、柊は言葉と気勢を失った。


 拡張型スラスター――は良い。しかしその他の追加武装が――!


 タングステンナックルに、タングステンベアナックル、それとタングステン爆炸(ばくさく)ナックル。


 ――だけ?


 全部()近距離装備じゃねえか!?


 柊陸曹は近距離戦闘を大の苦手としている。それは二年を経過した現在にあっても変わらず継続中の彼の弱点であり、もはや心的外傷(トラウマ)に分類しても過言ではないものだ。


 「――嘘だろ?」もうすっかり彼のおなじみとなった残念な台詞がまた口から飛び出していた。


個人的にウイスキーが好きです。シングルモルトをお気にのグラスでぺろぺろ舐めながらこうして原稿を書くのですが、今飲んでいるのは「ウルフバーンJAPAN EXCLUSIVE Ⅴ」度数は50%。もちろんもったいなくって安酒のようにかぱかぱとはいけないのですが、最近心に余裕があるせいか(反して財布に余裕がないのですけれど)少量でもじゅうぶんに楽しめている自分がおります。なにごとも心の平穏が大事ということなのでしょうねw(なによりこの子は上げ底瓶じゃないのが嬉しい)

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