ノーシェイプ、あるいはシェイプレスの事情、の3
ねえね、ミルってさ。生まれどこ。あ、あ、ほぇああーゆーふろむ?の方が通るかな?
さっきから小笠原ミルの周りを、彼女を周回する衛星のようにくるくるとマレが行ったり来たりしていた。
ダオが気をやってそれとなく定期的に釘を刺しに行くが、マレは聞く耳を持つつもりはないようだ。
それどころか「こっちはいいからアンタはノーシェイプのコーティング短縮の方法でも考えてろよ」などと言いやがるものだから、ただでさえ短腹なダオは、都度爆竹のように怒りを爆発させた。
そのうえそんなやりとりがなされる度に、擬人化された小動物ならおそらく出すであろうか細い声で「私のことで争わないでください」と、小笠原ミルが声を震わせるので、物事は一切収束へとは向かわずに現在まで繰り返されていた。
「新しいメンバーのことを知りたがって何が悪いよ?」
「悪いとは言ってないわよ。あたしは勤務時間内は仕事しろって言ってんの!」
「は!ただしの話聞いてた?やる事ない場合は自由時間なんだよ!私はもう自分の仕事は済んでる」
「はあぁ!?あたし一人に押しつけようって腹か?あぁ!?あんたも少し考えたらどうなんさ!」
「さっき『コーティングはあんたにゃ出来ないだろ』って言ったのはどの口なんだコラ!コーティング終わったらすぐにマスドライバーにノーシェイプ乗っけたらぁ」
「私のために争わないでください〜!」
『誰もあんたのことで争ってなんかねえわ!』マレとダオの声が揃い、いきなり矛先を向けられたミルが半べそから本泣きの顔に変わった。




