表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/16

感応

 エリザベートの会釈に対し“従士”は改めて口上を申し述べる。


(それがし)はウォーケン侯爵家の嫡男イース公の従士でハンス・フリードリヒと申す者。

 主人イース公より、貴方様を護り“ウォーケンの地”へお連れするよう拝命いたしました次第」


 その言葉にエリザベートは手に持っている“杖”で足元をガツン!と突いた。


「私にこの地を離れよと言うのか!」


「この地は……次の満月までには侯爵家の衛士が揃いましょう!さすればこの地の民の安全は保証されます」


「それは我が地がウォーケン侯爵に占領されたと同義では無いか!」


「大公はあなたのお父上となられるお方です! 決して“娘”に不義をなさる方ではございませぬ! 貴方様が望めば如何なる援助をも厭わない事でしょう」


 エリザベートは固く口を結び、“杖”をぎゅっと握る。

 杖はその瞬間、ほのかなオーラに包まれたがエリザベートは介さない。


「皇帝の命が無ければ、そなたの話なぞ聞く耳を持たぬところだ!」


「では、ご同行願えますか?」


「うるさい!戻ってイース公へ伝えよ!『“畑”の持ち主はエリザベート本人! 誰の“種”を蒔くのかは持ち主が決める事! 引きこもりながら皇帝の命を成そうとする様な輩の“種”は受けぬ!』と!」


「それでは、我が主のイース公の言葉を申し述べさせていただきます。『従士ハンスは我が名代なり、ゆえにハンスと勝負する事は我と勝負する事なり!この勝負に我が勝てばそなたは我の物だ』と」


「なんと卑怯な!身代わりを立てるなど!!」


「やはり女子(おなご)であられますな!これでは勝負するまでもない!大人しく我が主の寵愛を受けなされ!」


「ふざけるな!!」


 エリザベートが杖を抜き一振りすると、胴回りが()()()()もあろうかという木があっさりと倒れた。


 この様にエリザベートが怒髪天になってもハンスは眉をも動かさない。

「血気にはやられるのは宜しいが、まともに斬り合って貴方様の首をはねれば私の首がはねられます。」


「負けるつもりはないとおっしゃるか?!」


「いかにも。ゆえにその刀であなたの三倍、木こりの仕事をしてさしあげましょう」


 今度はエリザベートが鼻で嗤う

「抜ける物ならばな!その刀、私以外には抜けぬわ!」


「分かっております」

 ハンスはもう一度片膝を付きエリザベートの手を取る。

 ビクン!と身を震わせたエリザベートを見上げ、ハンスは微笑み

「御手を拝借いたします」とその手の甲にキスをする。


「あっ?!」


 ()()()()()とも聞こえてしまいそうな声を思わず上げてしまったエリザベート!


 でも、確かに手の甲を触れる唇を通してハンスとエナジーが行き来するのをハッキリと感じる。


「これで私の事を受け入れてくれると良いのですが」


 力の抜けてしまったエリザベートの手からそっと“杖”を奪ってハンスはウィンクした。


「あくまでも“刀が”でございますよ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ