聖女ミルアの本当の職業
このステータスとかゲーム要素の単語をいかに分かりやすく簡単にカッコよく説明できるかが難しいですね。
井戸の名残がある、地下でミルアの声が響き渡っていた。実体が見えない謎の声と真面目に会話をしている彼女は、酷く不気味に見えた。
彼女を創造ノ魔法使いと呼んだ声は、くっくっくっと喉を鳴らして笑っているようだ。
創造ノ魔法使いは希少性の高いレア職業と言われるにも関わらず、数少ない嫌われている職業だ。
創造ノ魔法使い は生物を殺すことでポイント、点が手に入る。ポイントはその生物が、希少性が高ければ高いほど多く入り、入手したポイントを消費することで魔法を創造することができる。
問題は、この生物に”人間”も含まれることだ。他の生物を殺すような職業と違い、軽蔑される理由はここにあったのだ。
聖女とは別に関係ない職業、何故ミルアがそう呼ばれているのか。
「ここまで私に手を貸して下さるならどうして最初から私を聖女にして下さらなかったのですか?」
髪を苛立たし気にかきあげながら聞くミルア。
『可愛いミルア、言っただろう?今年は大事な一年だ、普通の聖女ではダメなのだよ。白が良く映える美しさと黒に染まれる度胸のある君でないと』
ミルアは聖女ではなかった。彼女の本当の職業は創造ノ魔法使い。ポイントを消費することでステータスを偽造、聖女に使えるスキルを作り出して勇者一行に加わっていた。
その間本物の聖女は謎の声の持ち主、神に居場所を教えてもらい、生まれる度に殺していた。聖女はポイントが高く、誕生しては殺すのを繰り返したおかげで聖女のスキルを創造するのにポイントが不足することは無かった。
『ミルア、私は君を応援しているのだよ。あの神霊をも出し抜こうとするその素晴らしい精神力。まさにこの大仕事に相応しい人間だ』
神とミルアの出会いは12年前、汚い路地裏だった。ミルアはあの頃と比べると、かなり見違えたと自覚していた。それでも、彼女は依然として目的を欠片も果たせていなかった。
「そろそろ大仕事って何か、お教え下さいませんか?」
少し落ち着いたのか手櫛で綺麗に波打つ黄金色の髪を整えている。
『それを教えたら、それに沿うように動いてしまうだろう?それだと上手くいかないし、つまらない。君は君のやりたいことをしなさい』
「いつもそればかり」
分かってはいたが、不服は不服だというように頬を膨らませる様子は幼い少女を連想させた。
「神様?」
宙に向かって声をかけるが、返答はこない。他の人間の所に行ったのだろうかと自室にはあるのとは別の、古びた鏡台で見た目を整える。
鏡台はピンク色でそのボロボロ具合も含めて、ミルアが昔暮らしていた所で女たちが使っていた物に似ている。彼女の記憶では、女たちは安物でも新品の鏡台二つは買えるだろう値段の化粧品や装飾品でその身を飾り立てていた。
そうして興味のない男の話を口紅を塗りながら話す。別に好きではないその時間もミルアにとっては、白いシーツに触る仕事に比べればマシだった。
髪を整えた後は、目立たないよう服を変えて転移魔法の準備をする。これもミルアが殺して貯めたポイントで作った魔法だ。
転移魔法で短時間でまだ職業確認できる前の幼い聖女の殺害を済ませる、それが彼女のやり方だった。これを繰り返して偽の聖女だとバレずにきたのだ。
転移魔法の魔法陣が床に展開されると、これから人を殺すというのに全く緊張の様子なくそこに乗る。ミルアの姿は一瞬で消えて、地下には誰もいなくなった。
ミルアの本当の職業が判明しました。神様は何故ミルアに肩入れするのか、気になる方は次回も待っていてくれると嬉しいです。まだ二話の状態でポイント入れてくれた方、ありがとうございます。
次回は、またエレク視点に戻ります。
ただ、作者あるあるで予告した展開と違うことになることもあります。