完全無欠の手術室《パーフェクトオペレーション》
「お、おい待て本気なのか、本当にこの場で結界を張ってその白魔導士にやらせるのか」
「もちろんです、赤魔導士様はこのオペレーションが終わってからすぐ回復魔法を詠唱できるよう準備していてください。タオフー、この結界が破られないようにドラゴンの攻撃から守ってくれ」
完全無欠の手術室の中は外気のどんな細菌やウィルス、魔法攻撃、物理攻撃を受け付けない、それは患者の体内に不純物を入り込ませない目的と治療をする魔導士を守るために魔導士ディーラーにのみ受け継がれている特別結界術である。
「ハオ、ハオ。なるはやでお願いネ」
「ちょちょっと待て、そ、そんなのこの戦場では無謀だ。結界の中と外じゃ時間の流れが違うとはいえ、その差はせいぜい五分程度。この回復オペレーションは平均で五時間はかかるものだ。そんなに待てるわけがない」
「なんだそんなことっすか、それじゃムートさんには関係な話っす」
「なに?」
横から口を挟んできたベルリーに眉をひそめたがベルリーが発した次の言葉で赤魔導士は驚愕する。
「ムートさんは勇者トロストイのパーティーに所属していた黒魔導士イザベル様の元コンビっすから」
「あ、あの伝説の黒魔導士イザベル様のコンビだって……、おい、あんたの完全無欠の手術室はどのくらいもって、現実世界にどれほど影響されんだ?」
「一人の患者に対して五時間、現実世界の経過時間は約五秒」
この結界術は魔導士ディーラーの技術と魔力によって継続時間と現実での経過時間が変化するが、魔導士ディーラーは帝国が定める冒険者ランクのような階級がない。それゆえにひとくくりにされがちだがもし、今後正式な階級が魔導士ディーラーに定められたとしたら。
「ムートさんのランクはSS級を優に超えるっす」




