魔導士ディーラー龍脈を目指すそうです。
多分、魔導学校でも苦労したんだろうな。私は前を歩く少女の自信なさげな背中からそう感じとっていた。ある程度成績なんかが良ければ赤魔導士くらいまでは昇格できると聞いたことがある。
まして大半の魔導士は黄魔導士、どんなに出来が悪くても青魔導士くらいに昇格してから卒業するらしいから、最低ランクの白魔導士で卒業してしかもパーティーに入る魔導士なんて滅多にお目にかかれないレアケースだ。
ひどいことを言えば落第生の中の落第生なわけだが、どうしてそんな彼女が黒魔導士でも習得困難な爆裂回復魔法を使えたのか私は気になって仕方ない。
「あっありましたぁ」
ぐにゃりとした口調に脱力しながらも私は少女が指さした先にお目当てのリュックサックを見つけて一安心する。
「あぁ良かった、大事な商売道具を失くすとこだった」
駆け寄って片手でリュックサックを拾い上げ背中に背負った私を少女はまるで魔物を見るような脅えた目で呆然と見つめている。
「重かったでしょう、実は魔力でロックをかけているから私以外の者の魔力を感じると本来の重さに戻ってしまうんだ」
「本来の重さですかぁ?」
「そう、これはねいろんなメーカーの魔道具が何万も保管できる倉庫なんだ」
思わず笑みをこぼしながら、リュックサックを開けて見せる。中は多次元空間になっていて底は見えない。
「不思議ですぅ」
少女は好奇心を抑えきれない模様。目を丸くしてリュックサックの中身を覗こうと小走りでこちらに向かってくる。
「あっ」
「えっ」
草の結び目に躓いた少女は短い言葉を発した後、口が開いたリュックサックに吸い込まれるように頭からダイブした。
少女の体はあっという間に消えた。
「……おーい大丈夫かい?」
「……真っ暗ですぅ」
まぁ明かりを灯してないから当たり前か。出してあげることは簡単なんだけど、彼女を外に出して移動するよりこのままの方が良さげな気もする。
「あのぉこれ出れますかぁ?」
ぶつぶつひとりで考えているとリュックサックの中から不安げな声が聞こえた。
「出れるけど、ちょっとそのままでいてくれるかい?」
「えぇ、あはぃ」
私はリュックサックの口を閉じて背負った。少女が言っていた川の存在は好都合だ。龍脈の近くには決まって清らかな水が流れている。もしかしたら目的の場所かもしれない。
少女を外の世界に出すのはその後でいい。