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魔導士ディーラー 戦闘補助③

「アイリス!」


 私の切羽詰まった声が彼女に届いたのか、こちらを振り向いた。


「邪魔をするな!」


「落ち着け、やみくもに突っ込んでも勝てる相手じゃない、反撃のきっかけを観察するんだ」


 反射的に言ったもののなんの手がかりもつかめていない。

 視界の先には大勢の冒険者たちがダメージを負い、次の大きな咆哮で今にも倒れてしまいそうになっていた。


 調教されていない野生のモンスターは理性が効かない、欲のままに生きそして人間は無力だ。


 ただ無情に、ドラゴンは私たちを仕留めようと口を開け大気を肺に取り込んでいた。


「くるぞ防御魔法の用意だ」


 冒険者たちが詠唱はじめ魔法の盾を作り始める。


 しかし思いのほか時間がかかっており魔法の盾は従来の半分ほども大きさが足りていない。


「くそあれでは怪我人がでる。メディー……」


 見下げた先のメディーを見てハッとした。彼女からは湯気が立ち、体中から魔力が漏れ始めていた。おそらく供給過多になったぶんの魔力を外に排出しようと身体が抗い副作用をおこしていたのだ。


「だ、だいじょうぶですぅ。か、患者さんを助けなくちゃぁ」


 口を手でおさえながら立ち上がろうとするメディーを見て私は自分の判断を悔やんだ。


 患者を助けることに必死になってメディーの身体へ必要以上に魔力を流し込んでしまった。


 魔力というのは使い方を間違えれば劇薬にもなる。人為的な魔力や大幅な摂取は簡単に人を廃人にしてしまうのだ。


 メディーを気にかけようにもドラゴンは体内に取り込んだ大気を乱気流のごとく叫び声とともに吐き出す。


 今の状態であんなものを喰らったら、全身を強く打って骨折と臓器の破裂はやむを得ない。当たり所が悪ければ即死だ。


「メディー患者のそばを動くなよ」


 魔法石をありったけ握りしめる。ステータスオープン、韋駄天レベル5発動を確認。


 私は驚いたメディーをしり目に彼らの元へ走り出す。


 無能力者の私が助けに来たところで何も変わらないことは分かっているが、今回は逃げることができなかった。


 これ以上、怪我人が増えればメディーの手当てだけでは対応できなくなる。もしかしたら魔導士の負担を減らしつつ患者を救いたい気持ちが体を突き動かしたのかもしれない。


「おいあんたそんなところに立つな」


 冒険者のひとりが自分たちが作った盾のすぐ後ろに立った私に声をあげた。


「私が攻撃を引き受けます。動ける仲間をつれて逃げてください!」


 そう言葉を発した自分自身に驚愕していた。勇気と無謀は違う。自分ができないことは極力出しゃばらずわきまえていた。


 ただ、今は一人でも多くの命を救いたいと思ったのだ。


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