魔導士ディーラー 戦闘補助①
「居合斬撃」
目を開けることすらままならない突風をアイリスは切り裂きながら進んでいく。後方の私たちは感覚だけで風の裂け目につっこんでいく。
「私の後ろを一列に進めください、障害物は叩く落すからです!」
自ら盾となり無造作に飛んでくる岩や枝をタオフーは無駄のない動作で的確に粉砕していった。
「ムートそろそろですよ」
かろうじて目を開ける。いまだタオフーの背中しかやんわり見えないがそれは一瞬で姿を現した。
暴風源にたどり着いたとき、巨木が連なっていた森は、ドラゴンが振りまく無慈悲な破壊であたり一帯を更地にしていた。
「け、怪我人は!」
私は半分ほどになっていたパーティーメンバーに気力を振り絞って叫ぶ。防戦一方で防御魔法を唱え続ける詠唱者は私たちの存在に気が付くと、顔をぐちゃぐちゃに歪ませながら、
「魔力の出力がおかしいんだ!」
そう叫んだ。前線で戦っていたメンバーの一人がドラゴンの引き起こしたトルネードに捕まってしまい、上も下も分からぬままに振り回されたあとなすすべもなく地面に落ちていく。
「メディー手当だ、早く」
「は、はぃ!」
吹っ飛ばされた戦士の手当てに走ると、
「あいつが元凶か!」
アイリスは迷わずドラゴンに向かっていた。
「アイリス勝手に動くな!」
私の声は彼女に届くことはなくやむを得ず、目の前の治療に集中するしかない。




