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魔導士ディーラー 味方の暴走を止めるそうです。①

 唇を震わせゆっくりと刀を空に突き上げる。大樹の間をすり抜けわずかに地面へ届いた太陽の光を浴びた刀は、アイリスと共鳴するように煌びやかで輝いていた。


 あふれ出る魔力が具現化しオーラとなって彼女を包む。その力の源である刀からほとばしる意識に私の口が歪んだ。


「伏せろください!」


 タオフーは私たちの頭を押さえつけ地面に伏せた。


 アイリスが高々と振り上げた刀を振り下ろす。


 デスワームはかまいたちのような斬撃に抗おうとしたが、地面に身を隠す前になすすべもなく斬撃の渦に巻き込まれた。


「ムートさぁん」


 後頭部を抑えつけられたメディーは状況が把握できずに何度も私の名前を叫んでいたが、私はその呼びかけに答えることができなかった。


 しかしそれは当然であったのだ。視線の先にはマグマのごとく赤い鮮血を流し、悲鳴を上げながら蹂躙されていくデスワームと無邪気に敵を弄び追撃をやめないアイリス。人間の私が魔物に感情移入をしてしまうくらい圧倒的な彼女の太刀筋は、まるで幼い少女が庭先で見つけた虫を引きちぎって遊んでいるかのように残虐で穢れない光景だった。


「このままではまずいっすよ」


 ベルリーの忠告に私は平静を取り戻したが、細切れになったデスワームを遊び相手がいなくなった未就学児のような悲し気な瞳で眺めるアイリスの横顔に悪寒がした。


 歪んだ笑みを浮かべる彼女がこちらを振り向いたとき、私は戦慄した。


 まるで新しい友達を見つけたような澄んだ笑顔。


「ムート残念なお知らせがあります」


 タオフーが苦い笑みを浮かべて立ち上がる。


 私はその言葉の意味を完全に理解してしまった。


 地中のデスワームだけじゃない今まで感じられなかった魔物たちの視線が痛いほど伝わってくる。


「モンスターハウスか」


「えぇ中規模ですが、そこそこ強いのが数体、私はそれを対処するので、それが終わるまで殺されずにたえろください」


「分かったとはいいたくないけど、やってっみよう。タオフーも無茶するな」


「無茶をするのはあなたですよ、どのみち妹さんを止められないと全滅ですから」


「じゃあ、できるだけ早めに助けに来てくれる?」


「ハオ、善処しますですよ」


 笑うのをやめたタオフーは構えた。ぞろぞろと顔を出す魔物たちと相対しながら、私は彼と背中合わせになりアイリスを見つめた。


「あそぼ」


 刀を向けたアイリスを前に私は携帯していたありったけの魔法石を両手で持てる分だけ取り出した。



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