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魔導士ディーラー 危険が迫ってくるそうです。①
咄嗟に呼応した彼女だったが魔物の不意打ち攻撃が刀をかすめ、その勢いで鞘が空へと吹き飛んだ。
ミミズに近い生態を持つ彼らに顔はなく大きな口とその中に生えた無数のするどい歯で息絶えたトロールを一瞬で食してしまった。
運が悪いことにまだまだ食べたりないらしい。
「ちぃっ」
アイリスは刀の柄手を両手で握りしめる。五大神剣のひとつでその刀身に知識を司る『知剣アルジャーノン』は数百年前から実在する刀であるが刃こぼれや錆が一切なくゆるやかな曲線を描き、独特で美しい地金が見て取れた。まるで名刀と名高い日本刀のようだった。
「ムートさんはやくあの鞘を拾わないと彼女が危ないっす!」
吹き飛ばされた鞘を見て叫ぶ。しかし私にはデスワームとの遭遇以上に危ないことなど考えられなかった。
「ベルリーどういうこと?」
「あの剣は鞘に収まっていないと」
「収まってないと?」
「使い手の知性が奪われてしまいます」




