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魔導士ディーラー アイリスの戦闘③

 ポケットから魔法石を握りしめる。ステータスオープン、能力察知レベル1発動を確認。


 トロール レベル15

 HP ? MP ? 

 固有スキル ?

 筋力 ?

 魔力 ?

 敏捷 ?

 耐久 ?


 くそ、レベルしかわからない。それにしてもステータスを隠すバフまでかけられているなんてますますおかしい。しかしいくら魔法石を使った即席スキルでもレベルしか分からないなんてなんてざまだ。


「相手のレベルはきみより上だぞ!」 


 僅かだが戦力差はトロールに分があった。しかしアイリスの背中から感じる気力は敗北する懸念など微塵もない。


 アイリスはトロールとの間合いをじりじりと詰めていく。敵もすぐには行動せずにこちらの出方を窺っていた。


 私はメディーの呼吸が正常に戻りつつあることに意識を周囲に向ける。


 ステータスオープン、地獄耳レベル1発動を確認。


 不審な物音はなし。


 草むらや巨木の陰からこちらを狙っている魔物はいない。


 私は大きく息を吐く。


 いくらアイリスの剣技が優れていてもレベルが均衡している敵を目の前にすれば複数の敵を警戒して戦闘することは経験上不可能だ。となれば護衛に回ってくれているタオフーがサポートにでるだろう。 


 そうなったら彼女たちを守るのは私の役割になるが、メディーに回復の準備をしながら四方八方の警戒を頼むのはまだ無理。ベルリーは私以上に戦闘は専門外。


 魔法石をあまり消費したくはないが、この場において私以上の適任者がいない。 


 もし他の魔物が横やりを入れてきたら魔法石を二つ使用して鉄拳スキルと韋駄天スキルで確実に仕留めなければこのパーティーはたちまち崩壊するだろう。


 まったくまだ何も戦況が動いてないのにこの緊迫感。今まで勇者様のもとで楽をしていたつけが今来てるみたいだった。


「ゴォォォォォォ」


 先に動いたのはトロールだった。雄たけびを上げ巨大な木刀を振り上げる。


「いざ尋常に……」


 彼女の重心が低くなったと同時に地面を蹴る。アイリスがさっきまで立っていた場所は音を立ててえぐれた。巻き起こった辻風が私たちの傍らを駆け抜け、アイリスは旋風と化す。


 私が声を上げるさなか、アイリスはトロールへと肉薄する。突進の勢いを保ったまま敵の攻撃をぎりぎりまで引き付けておそらく彼女は固有スキルを発動させた。それがどんなスキルでどんな効果があるのかはわからないが、彼女が繰り出した斬撃は武器を持った敵の腕を斬り飛ばし、飛ばされた腕は大量のラベンダーとなり空に舞う。その巨体に無数の深手を負わせることを成功させている。


「つ、強い」


 トロールはなすすべもなく地面に倒れ大量の血を流していた。 





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