魔導士ディーラー アイリスの戦闘②
「おい本当にその魔導士大丈夫なのか?」
「メディーは大丈夫だ、ちょっと私の説明が悪かっただけだと思う」
私はメディーをおぶってからギアと一緒にアイリスに近づいた。
「それよりアイリス、森の様子がおかしくないか?」
「魔物が少ないってことか?」
「それもそうだが、なんだか試されている気がするんだ」
「何を言ってるんだ」
はっきりしない言い方に苛立ちを隠せないといったところか。だがこの異変は最初に森に足を踏み入れたときと違っていた。考えもなく突発的に相対していた魔物とは明らかに意識が違う。襲ってくる数、個体のレベル、魔物の種別。誰かが私たちの実力を計るために差し向けたような気がしてならない。
アイリスにそう説明しても彼女は簡単に納得はしなかった。
当然だ、種別が違う魔物同士が統率をとって襲ってくるなど、まして魔王軍直属の魔物ではないが知性をもつなどありえないことなのだ。
「とにかく気をつけよう、それに……」
さっきから誘導されている気がするんだよな。
「それになんだ?」
「いや何でもない」
まさかそこまではありえないだろう。アイリスは戦闘の興奮で乾いた唇をなめている。ぞわりと、背中や肩を包み込む震え。巨木の陰に隠れていた一体のトロール。私の太ももよりも数倍太い腕には巨木をくりぬいて作ったような巨大な木刀を手にしていた。
「メディー!」
私は無理やりメディーの体をゆすった。
「は、はぃ」
目を覚ました彼女は目の前にそびえたつ魔物の気迫に驚いて口から泡をはく。私は彼女を下ろして魔力を無理やり供給する。
「あぁ、す、すみません。私また失敗を……」
「そんなこといちいち気にしちゃだめだ。でもどうしても気になっちゃうなら一緒に挽回しよう」
「は、はぃ!」
私は彼女の肩を叩いて落ち着かせてからベルリーを自分の背後に移動させバックアップの準備を整わせる時間を作った。
「ほら妹さん力の見せどころですよ、ムートたちは私が守りますから存分に暴れろください」
「ほうおもしろい」
アイリスは笑っていた。彼女大きく深呼吸をしてから柄手に触れた。




