魔導士ディーラー 軽くあしらうそうです。
魔物が住まう森の入り口は異様とも言える静寂に包まれていた。
修羅を超えてきたであろう他のパーティーメンバーもこの雰囲気には若干飲まれがちになっていた。
「おいお前ら本当に死ぬぞ」
わざわざこちらまで足を運んで忠告しに来てくれたおじさんの目は笑っていない。
「そうならないように気を付けますよ」
「どうだかな、白魔導士に魔道具ディーラーとそのメーカー。追加徴収された戦闘員がそこのか弱そうなお嬢さんじゃねぇ」
私は軽く微笑む。営業スマイルってやつだ。絡みたいだけのめんどくさい輩はこうやってあしらうに限る。
「これより探索を開始する」
森の入り口でニーダが宣言する。
ここからは私たちは別行動だ。
「せいぜい生き残れるようにな」
捨て台詞を言って立ち去る男を遠目で眺めながらふと周りを見渡せば私たち以外のメンバーは森に消えていた。
「しかし嫌われてますね私たち、妹さん集会でどんな悪態をつきやがったのですか?」
「黙れ、男女」
「哦」
「とぼけても無駄だ。そんな成りをしていても匂いで分かるんだよ」
「あら♡、漏れちゃってました?」
ぶりっ子のように照れ笑いするタオフーは視線を送ってくる。
「おい引き返すなら今だぞ」
突き刺さるような声に、私がアイリスに視線を向けた。腰に携えた刀をカタカタ鳴らしながら目を細めている。
「大丈夫だ、こっちもそれなりの覚悟でここに来ているからな」
「ふん」
彼女は森の奥へ進んでいく。