魔導士ディーラー 魔導具メーカーと晩酌するそうです。
「それで僕が預託所に会社から届いた魔道具を取りに行っている間にそんなことがあったんすか」
晩酌しながらさきほどまでの流れを説明するとベルリーは呆れたようにお猪口をなめていた。
「でもよかったすね、討伐クエストに参加できて」
「あぁ」
「そっすよね、これだけ購入したんだから使用しないともったいないっす」
ベルリーは魔道バックをポンポンと叩いて見せた。
「一応預託として消耗品の魔道具も持ってきたっすから、あっこれはサービスですので困ったらだしてあげるっす」
彼女は月の売り上げと粗利を達成したので気楽なものである。営業マンの余裕を感じて、私は苦笑交じりにカットされた肉をつまむ。
「マリアごめんね、晩酌つきあわせちゃって」
「ううん、いいのムートさんには私たちのことで迷惑をかけたから」
カウンターに立つマリアはあと片付けをしながら酒のあてを片手間で作ってくれている。
「魔導士様たちは?」
「メディ―は部屋だよ、たぶんもう寝てる。タオフーは昼のいざこざが終わってからすぐに寝た」
「そうなんすね、残念だなぁ、メディ―ちゃんと飲みたかったのに」
「メディ―はまだ酒飲めないぞ」
「そっすね、はいムートさん」
「あぁ、ありがとう」
私はベルリーにお酒を注いでもらいながら震える手を鎮めるようにお猪口をすする。
「相変わらず出陣前はビビりっすね」
「相変わらずってなんだよ、今回は俺がみんなを守らないといけない立場なんだぞ」
「みんなを守るって……ムートさんただのディーラーなんだから、あの綺麗な人と剣士さんに任せて後ろでどっしり構えときゃいいっすよ」
「みんなっていうのは、ベルリーだって入ってんだぞ」
「えっ、僕もっすか?」
「そりゃそうだ。巻き込んだのは俺だからもしもの時は俺が命を代えて守る」
私は傍らにおいたリュックサックから緊急用ワープボタンという魔道具を取り出してベルリーのテーブルに置いた。
「リュックの奥の方にひとつだけ残ってた。最悪これを使えばベルリーとメディーはこの町に戻れる」
「わかんないっすねぇ、こんな貴重な魔道具をメーカーの僕に渡しちゃうあなたのお人よしが」
ベルリーはそっと魔道具を私のテーブルに滑らせる。
「使うならご自分と魔導士様に、どんなことがあっても魔導士を守るのがムートさんの心情でしょ」
「それは勇者様がいたらの話だ。でも今回は違う。ただ私を迎えにきてくれただけのベルリーを巻き込んでしまった。だからあなたがこのクエストで死ぬことはあってはならない」
今度は魔道具をベルリーに手渡す。
「いいんすか? 死んでも」
「死なないよ、だから信じて受け取ってくれ」
「……あぁもう分かったすよ。それじゃありがたく頂戴するっす」
ベルリーはお猪口の残りを飲み干して立ち上がると、マリアに晩酌のお礼をして部屋に戻っていった。
「マリアありがとう、私も休むよ」
「はい、ムートさん」
「っん?」
「アイリスちゃんのことよろしくお願いします」
深々と頭を下げるマリアに私は微笑んで、
「大丈夫、チルトだって分かってるさ。二人ともきみの元に還すから。おやすみ」
軽く手をあげて階段を上っていく。




