魔導士ディーラー 剣士アイリス②
集会場といってもその実態は地域の公民館レベルであり、本来ならこういったクエストはギルドの掲示板に張り出されるのだが、これはギルドを通さない非公式な依頼だ。
出所はおそらくあの新興宗教団体だろうがあまりにグレーゾーンな仕事だ。
そのためなんの集会なのかを悟られないため、急繕いで用意しました感が満載であったがたしかに探索候補メンバーがぞくぞくと揃っていた。
「ちょっとムートさん、ここかなりまずいんじゃないっすか? ブラックな集いじゃないっすか?」
「オフホワイトだよ、ベルリー」
「大丈夫なんすよね、うちコンプライアンス厳しいんすよ」
「大丈夫だって」
無理やり連れてきたベルリーは訝しむが私が焦りながら追及をかわす。
周囲からいくつもの視線を感じていた。
緑の魔導士が二人と青の魔導士が一人。彼らが見ているのは私ではなくその後ろにいるメディーだ。
「白魔導士風情がなぜいるのか?」
そんな彼女を中傷する言葉がひそひそと聞こえてくる。
冒険者パーティーに加入している魔導士は青の魔導士以上の人間が基本であるからおどおどした見た目で最下級の称号を持つ女の子が珍しいんだろう。
いつの間にか他の冒険者たちの視線も私たちに向けられていた。
私の方を見てほくそ笑むようなジェスチャーをする者もいる。
しかし、バカにされるのは慣れっこだし、いちいち気にする年齢でもないのだ。
「そういうなよ、森にはドラゴンの他にも凶暴な魔物がわんさか出てくる。戦闘員の俺たちは休む間もなく戦うことになると思うからきみたちのサポートが大切になってくるだろう」
「それはどうも」
私は笑いながら会釈するが、ニーダの視線はメディーをとらえているのがわかる。
「よし作戦の確認とメンバーの編成を発表する」
それからニーダは私と目を合わせることはなく壇上に視線を向ける。
壇上にはチルトの姿が見えた。




