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魔導士ディーラー 剣士アイリス

昔の記憶をたどりながら私は彼女の家にたどり着いた。


 中心街から離れ森との境界線がほど近い場所でひっそりと暮らしていたのだ。


 花壇にはチルトが大切に育てていた花たちが今も植えられていて風になびく。玄関先から漏れる殺気に私は緊張の糸を張り詰めながらドアをノックする。


 反応はない。


「アイリス入るぞ」


「絶対だめ!」


 鋭い眼光を潜めたマリアがそこに立っていた。


「マリアには関係ないことだ」


 ヒートアップしている二人には私の存在が見えてない。


「関係あるわ、どうしてあんな危険な森に親友を行かせなきゃいけないの?」


「愚門だな、チルにぃの名誉を守るためにいくんだよ」


「だめ、行かせない! あなたを死なせたくないの!」


 その言葉にアイリスはいきり立つ。


「ふざけるな、お前はチルにぃの名誉を守りたくないのか!」


 睨みつけるアイリスとは正反対にマリアの頬には涙が伝っている。


「チルにぃは大勢の仲間がいる状態ではスキルを使えない。なのに御上がこちらの意見も聞かずに勝手に編成したらから、こんなことになったんだ。チルにぃに落ち度はない」


「それは仕方ないじゃない! チルトはみんなの命を守った。それでいいじゃない!」


「仕方なくない! ……もう帰れ、そして身ごもった体で二度とこんな遠くまでくるな」


「アイリスちゃん!」


 家を出ようと玄関先まで歩いてきたアイリスはようやく私の存在に気が付いたようだ。


「盗み聞きとはいい度胸だな」


「アイリス……」


「失せろ」


 私を押しのけ鍵もかけずに出ていこうとする彼女の腕を掴んだ。


「はなせ」


「森にいくのか?」


「だったらなんだ、その手をはなせ。叩き切るぞ」


 そう簡単にはなすわけにはいかなかった。


「違うそうことを言いたいんじゃない、森に行くなら私も一緒にいく」


「ただのディーラーが? あの森に行ってなんの役に立つと?」


 理解しがたい物を見る目で私を睨みながら彼女は大きなため息をついた。


「ムートさん?」


「マリア、ごめん二人の話を聞いてしまった。でもアイリスを行かせてやってほしい」


「……」


「私も同行する。私だってチルトが失脚したなんて信じたくない、マリア大丈夫アイリスは私が守る」


 カッコいいことを言ってみても、結局私は魔導士ディーラー。


 私にできることは魔導士のサポートと、戦闘員に魔法石を供給することしかできない。


 そうさ私の力はあくまで仲間に依存するんだ。女神アナスタシアが言ったように私は主人公にはなれない。でも、私は誰かを主人公にする力はあるんだ。


「こうなったら何を言ってもだめですね。ムートさんアイリスちゃんをよろしくお願いします」


「ありがとう。信じて任せてくれて」


 会釈して立ち去るマリアに私は小さくつぶやいた。


「おい、死ぬぞ」


「し、死なせないよ、きみもチルトも絶対に助けるそのために私が、魔導士ディーラーがいるんだ」


「ふん、偉そうに……マリアがなんと言おうが手助けは無用」


「それはできないよ」


 聞き覚えがある男の声が同時に聞こえて私は慌てて振り向く。ダンカンのところに来ていたニーダがそこにいた。


「きみがいくら森に行きたくても行方不明者探索メンバー候補に入ってないからね。無理ってもんだ」


「……おい、どういうことだ? 私は御上が出してきたメンバーリストに入っていただろう」


「外されたのさ、きみのお兄さんがきみのメンバー入りを昨日取り消した」


「なに!?」


「反論があるなら集会場に来なよ。きみのお兄さんもいる」


 











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