魔導士ディーラー 答えに悩むそうです。
「どう思っているとは?」
「そ、そのぉ……」
その次の言葉が言いずらそうに口をもごつかせるメディーに、なんとなく分かっている私は必死にはぐらかそうと頭の中で知恵を巡らせる。
「冗談だよ、とても素晴らしい才能を秘めた魔導士だと思ってるよ」
「ありが……そ、そうじゃなくてぇ」
「でも、カギはかけた方がいいかも。メディーは魅力的だから」
追及をかわされたことに気が付いたのか、被せ気味に言った言葉に唇を尖らせて不満そうに私を見る。
柄にもないきざなセリフを言った私の方が恥ずかしくなって咳払いする。仕切り直して、
「明日ギルドに行こうと思う」
「ギルドですかぁ?」
「うん、守衛組織の様子を知りたいし、あとあの怪我した女の子のことなんだけど……」
「実はそのことでムートさぁんに相談したくてぇ」
そうだろうな。私も応急処置とは言え女の子の身体に触れた。メディーは守衛に保護されるまで女の子の手当をしていたのだからどういう状態か理解がある。
「治療して気がついたのですがぁ、あの子、乱暴されていましたぁ」
「……魔物にか?」
「いえ、おそらく人です」
「そうか」
憤りを隠せない。しかし冷静になれば当然だ。生殖能力がない種族のメスをゴブリンたちが襲うわけがないのだ。
「許せない」
「はぃ」
私は拳を硬く握りしめ大きく息を吐いた。
「やっぱり明日はギルドに行く前にチルトの家に行く」
「わ、私も行きますぅ」
「分かった。今日はおやすみ」
「わかりましたぁ。ムートさぁんおやすみなさい」
メディーの部屋を出て扉を閉めた。怒りを鎮めようと深呼吸をすると階段の下から微かにマリアのため息の音が聞こえてくる。
あまりの深いため息に声がかけられず自分の部屋に戻り、ベッドの上に寝転がる。
「アイリスか」
瞼を閉じる。お転婆な彼女の面影が少しだけ思い出された。




