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魔導士ディーラー 契約を交わすそうです②

「あのぉ心なしかぁムートさんの怪我が増えてるような気がするのですがぁ」


 昼の食卓で眠気眼のメディーは開口一番に真実をついていた。


 感慨深そうににやつきながらこちらを眺めているタオフーは私の反応を楽しんでいた。

「段差につまづいてこけただけだよ」 


「こけてそんなに傷だらけになりますかぁ」


 欠伸を我慢しながら核心をついてくるメディーに困っている私の姿を面白おかしそうに眺めながら頬杖をついている。


「ム、ムートさぁん、そ、それじゃあ今夜も……」


「いやいやいや、もう大丈夫、そんなことよりタオフーこの肉はなんの肉なの?」


 速攻で断って茶を濁したが、メディーのやつ素面のときより勘が鋭い気がする。


 この世界では立派な治療行為とはいえあんな過激なことを毎晩されたらいつか性癖が壊れて本当に捕まってしまう。


「丸鹿の燻製です、繁殖期のやつですから脂がのって美味しいでしょう、あなたも顔を洗ってきなさい。お昼にしましょう」


 笑って頷きながら、タオフーが肉を私の皿に載せた。


「ムートさぁんはまだ完治してないですからぁ、無理しちゃダメですぅ」


 目をこすりながら洗面所に向かっていくメディーの背中を目で追いながらそういうわけにもいかないんだよなぁ。と出かけた言葉を飲み込もうとしてせき込んだ。


 胸を叩いて、水で流し込む。ついでに野菜が足りてない気がしたので取り皿に盛った。

「それは庭でとれた野菜ですよ」


 ちなみに異世界にも四季はある。ただ暑い期間と寒い期間が長くどちらでもない過ごしやすい期間が年々少なくなってきていた。


「きっと彼女は気が付いてますね」


「メディーがまさか」


 おどけた仕草の私を諭すように森から吹き込んできた風が窓を叩いた。


 廊下の方ではとたとたした小さな足音が響く。その軽快な音を聴くとなんだか安堵する自分がいる。


「さっき話したことこれで手打ちでよいですね」


「そうしてくれると助かるますよ」


 私は椅子の横に置いたリュックサックから勇者パーティーを追放された際にもらった違約金の一部を手渡した。


 

 


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