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魔導士ディーラー 衝撃を受けるようです。

気の流れを教わるために外へ出たムートにタオフーは石を握りしめた。

「ちなみに気というもの聞いたことは?」


「はい、バトルもののアニメでよく聞きました」


「……簡単に説明したほうがいいみたいですね」


 そう言うとタオフーはそこら辺に落ちてあった石ころを手の平で握りしめた。


「私は石を握っています。この水たまりのうえで手を離すとどうなります?」


 こういうとき純粋な心を持つ子どもならそのままを答えるが、大人な私はどうしても引っかけ問題を疑ってしまう。


「えっと……石はそのまま下に落ちて水たまりに沈む?」


「ご名答。さてここからが本題です、ムートは石が下に落ちるということと水に落ちたとき何が起こるか予測できましたね」


 タオフーは続けた。


「経験に基づくこういった予測をもっと大きな事柄としてとらえること、それが気なのですよ」


「は、はぁ」


「力や物質の流れや変化をひとつひとつ意識するのではなく、大きな流れとして見ること。それを感じればあらゆるものの動きが予測できます」


「というと?」


 肩をすくめながら笑う。だってちんぷんかんぷんなんだもの。


「そうですね例えばある一点だけをみれば突然に見えることも広く大きな視点に立てばすべては調和のもと、流れによって動いていることがわかるのです。流れを意識するのですよ」


「えっと……うん?」


 たぶん今私の頭の上には大きな?がたくさん浮かんでいることだろう。


 そんな私を知ってかタオフーはやれやれと言った様子で私の前に立ちポケットから魔法石を取り出した。


「それでは武術で実践しますね、これで鉄拳スキルを発動し私を思いっきり殴ってみろください」


「えっ、いいんですか。こんな至近距離で?」


「構いませんよ、さぁ早いパンチで!」


 本来なら女性相手に攻撃なんて考えられないが躊躇してると本気で怖いから私は差し出された魔法石を握りしめた。


 ステータスオープン、鉄拳レベル1発動を確認。


 右拳に力がみなぎる。まだ若干痺れてはいるが威力は申し分ないだろう。


 私は力をこめてタオフーへ突いた。


 バチィィィィィィィン!


 破裂音のような音が聞こえて思わずやりすぎたと後悔したが目を開けるとなんとタオフーが片手のみでパンチを受け止めていた。


「そうこういった直線的な攻撃。ムートはこのあとどうするますか?」


 何事もなかったかのように質問される。あまりに声色ひとつ表情ひとつ変えないので大いに動揺しながら答える。


「う、腕を戻して反撃の準備をするとか?」


我猜ウォーツァイ、しかし命をかけた戦いにおいてはその動作は致命的です。正解はこう!」


 次の瞬間私は空高く飛び上がっていた。


 ――へっ?


 初めての経験で動きがスローモーションになる。地面に激突して攻撃されたことにきがついたが、痛みよりも驚きが勝ってしまった。


「私の今の攻撃どんな動きに見えましたか?」


 私の頭の上から聞こえてきた声は明るかった。


「は、はっきりとは見えませんでしたけど、なんかぐるぐるって流れて見えました」


是的シーダ。それが武術においての気の解釈です。優雅に流れる水の様にそして女性の体のように曲線で滑らかに動く。魔法やスキルも突然現れたりはしません。この世界のあらゆるものは必ず流れることで違う状態・形態へと変化します」


 実際に技を喰らってみてわかったようなわからないような。


「む、難しいですね、あははイタタタ」


 とぼけていると今頃になって痛みが身体に伝わってきた。タオフーはおかしそうに笑って私を起こすと茶目っ気全開で超有名アクション俳優のポーズをとり言った。


「Don't think, feelですよ」


 ――あっ、良い匂い。


 屈託のない笑顔と柔らかい匂いに魅了されている私にタオフーは顔を近づけて耳元でささやくように、


「あと、勘違いしないでほしいのですが、私は男ですよ」


「えっ……うそ」


 衝撃的な一言を言い放った。


 私は再び地面に背中をつけ目をぱちくりしながら空を見上げる。


「ホ・ン・トですよ」


 あんなに綺麗で今まで会ったどの女性よりも女性らしいタオフーが男。


 あっちゃんぶりけとはまさにこのことだ。


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