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魔導士ディーラー 憎悪のオーラにあてがわれるようです。

 残りの魔法石の数を考えるとこれ以上戦闘に使うこと憚られる。


「そ、そのぉ間違ってたらなんですけどぉ、なんだか胸騒ぎがしますぅ」


「そうだね、ちょっと不気味だ」


 気味の悪さはメディーも感じ取っているようだ。


 何か得体のしれない変化が、森に起きている。弱き者の悲しき性というべきか、身の危険に対する勘は残念ながらよくあたる。


 メディーが感じている胸騒ぎ以上に私も感じていた。



「潜伏スキルのレベルを上げよう」


「はぃ」 


 私の提案にメディーはすぐに頷いた。龍脈を出てからの連戦ですでに息が上がっている。戦闘スキルはいくらでも取り繕えるが元々の体力は変わらない。へとへとな状態で魔物との連戦はきつい。


 私はポケットの中に入れておいた魔法石を握りしめる。


 ステータスオープン、潜伏スキルレベル3発動を確認。


 これで上級レベルの魔物や中級レベルの知的生物から認知されにくくなったわけだが、偶然居合わせてしまったら何の意味もない。


 

この状況下では精神安定剤みたいなものだが、それでも不安を打ち消し平常な心を保つことのほうを優先させた。


「ムートさぁん?」


「あぁ、うん……」


しかしすぐに別の不安にかられ歩みを止めた。


 魔法石をいたずらに消費するだけで、肝心なところで在庫がなくなったらどうする?


 そうならないように昨日魔法石を大量に加工していたのだが、それでもそこの不安が消えない。


 もしさっきみたいに魔物が滞りなく魔物が目の前に現れたら、私のこの判断はメディーを危険に晒してしまうのではないか。


 ちぐはぐな私の態度にメディーは小首を傾げていた。


「大丈夫ですよ」


「えっ」


 ぱっと笑みを浮かべたメディーが私を見上げる。


 そして、きゅっと身体を強張らせながらも挑むような表情を浮かべていた。


「そ、そのぉ、わ、私が言いたいのはぁ、えっとぉ」


 一度言葉を詰まらせたメディーは、繋がれた右手を握りなおしながら大きなタメを作ると、全身を強張らせて小さな口を広げた。


「ムートさんを信じて……ひゃ!」

「っ! な、なんだ」


 突然吹き荒れた突風。いやこれはオーラと言った方が近いだろう。


 それも憎悪や呪いの類に似た触れただけで鳥肌が全身を駆け巡るほどの強力なやつが風に紛れ込んでいた。


 森の中を駆け抜けてきた重圧が、ついに私たちの身体を包んだ。巨木を揺らすような風はまるでオーラの放出だ。大人の私はともかくまだ幼いメディーの身体は悪辣なオーラの腕に掴まれたように空中に浮きあがった。 

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