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魔導士ディーラー 朝焼けのち出発するようです。

 迷いの森を抜けて一番近い街の名は『ヨダカ』と言った。帝都から離れた田舎町だが優秀な守りガードが数多くいる豊かな場所だ。


 実はそこに私の友がいる。 


 それは勇者パーティーのレベル上げで滞在したときに仲良くなった守り人、チルトだ。彼は『ヨダカ』の主力でチート級のスキルを持っていた。


 チルトの実力と人柄にほれ込んだ勇者様は彼をしつこくパーティーに誘っていたが、ついに勧誘は叶うことなく私は初めて勇者様が落ち込む姿をこの目で見た。


  町をでる朝。チルトは馬車で身支度を進めていた私にわざわざ会いにきてくれて「今度はビジネスではなく友として俺の妹と三人で一杯やろう」と約束してくれたことは本当に嬉しかった。


 この森を抜けたとき私は彼に一人の友として会うことができる。それを誇らしげに感じていた。


「龍脈を抜けたら一気に空気が変わりましたねぇ」


 メディーは私の体に身を寄せながら歩いていた。


「まぁそうだろうね、でも潜伏スキルを発動させているから私から離れなければひとまず襲われることはないよ」


「ひゃっ! ぜ、ぜったいに離れませんよぉ」

 うつむき気味に歩いていたメディーは顔を青くして私の腰にしがみつく。


「大丈夫?」


「だ、大丈夫ですぅ……今はムートさんがいますからぁ」


 腰から手をどけたメディーだったが目の端はこれでもかと垂れ下がり、よく見れば足が小刻みに震えていた。


 きっとこの前襲われたことがトラウマになっているんだろうな。過剰なストレスや恐怖体験はふとしたことからフラッシュバックしてしまうと聞く。


 ちょっと配慮が足りなかったな。


 私は、バツの悪さから顔を伏せた。


「メディーごめん、ちょっとデリカシーがなさすぎた」


「ど、どうしてムートさんが謝るのですかぁ」

 謝罪した私にメディーは寂しそうな表情を浮かべる。


「ムートさんが助けてくれなかったら私……だから謝らないでくださぃ」


 メディーは口をもごつかせながら手を握ってきた。


 私は万感の思いでその手を握り返す。


「森を抜けるまでこの手は離さないから、安心してついてきてくれ」


 こくりと頷いた彼女の顔は少し明るさを取り戻していた。


 魔導士ディーラーは魔導士をサポートするのが使命。


 勇者でなくともこの天使を絶対に守りぬいてやる。





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