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魔導士ディーラー 夕飯の献立を考えるようです。

「あぁ……また砕けてしまいましたぁ」


 十個目の石ころを砕け切ったところでメディーは大きく肩を落とした。


 私は砕けてしまった石ころを手の平にのせて左手で蓋をすると魔力を慎重に流し続けてもっと小さな魔法石の欠片をいくつか加工することに成功した。


「うぅ……何度やっても上手く出来ませぇん……やっぱり私は才能ないのでしょうかぁ」


「メディー」


 分かりやすくへこんだメディーの背中をさすりながら私はこの世界に来たばかりの頃を思い出していた。


「才能がないなんてそんなことないよ、私なんかになりたての頃なんかは手の中の石に魔力を流し込むことすら出来なかったんだから」


「ムートさんが?」


「そう、私は何をするにも不器用でメディーみたいによく石ころを粉々にしてたよ」


 あの憎たらしい女神から見放され勇者として転移できなかった私は授かった唯一無二の特性を生かせる方法を師匠に教えてもらった。やさぐれていたあの時にもし師匠に出会っていなかったら今の私はいない。


 前の世界で何もかも嫌になり明日が怖くて死んだ私がそれ以上に厳しいこの異世界で飯を食えるだけの技量と自信を身につけたんだ。


「この石ころたちだって磨けばどんなに小さくとも魔法石になる可能性を持っているんだ、それはメディーも同じだよ。あとは磨き方を見つけるだけさ」


 二回目の人生を送っている私だからこそ言える。運命なんて人の出会いでどうとでも変わると。


 だからこそメディーにはつらいまま気持ちを背負ったまま大人になってほしくなかった。


「うぅくすん……私なんかにそんな言葉をくれたのはムートさんが初めてですぅ」


 鼻を鳴らして喋るメディーの頭を撫でながら私はいたたまれなくなって空を見上げる。

 なんか良いこと言った感じになってるけど一言一句師匠の受け売りなんだよなぁ。


「うぅ、くすん」


 私はメディーが落ち着くのを気長に待ちながら魔法石の欠片をかき集めて手の中で一つに繋ぎ合わせた。欠片のままではただの綺麗な宝石に過ぎない魔法石だが、魔力を流して共鳴させることで無能力者もしくは特定の力を持たない術者に対して一時的ではあるが頭でイメージしたスキルを付与してくれる正真正銘の魔法石になるのだ。


「さてと、どうすっかなぁ」


 この森を無傷で抜け出すには最低でも魔法石が一人につき十個は必要になる。となると三日はここに引きこもらないといけないわけだが、当然腹が減ってくる。清らかな龍脈には無差別に人間を襲う邪悪な魔物は入ってこれないが、逆を言えば食料を得るにはこちらから動いて探すしかない。


 まあでもここには川もあるしさっき小魚がはねた様子も見てとれた、幸いにも巨大樹には果物らしきものがぶら下がっている。


 魔法石はゆっくり作成するとしてまずは腹ごしらえだ。


 私はメディーの背中をさすりながら夕飯の献立を静かに思考していた。






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