魔導士ディーラー 告白されるようです。
「おい……いったいどうなったんだ」
先ほどまで逃げ惑っていた戦士たちが慎重な足取りで近づいてくるのが見える。
「おい、ドラゴンが倒れてるぞ」
一人の戦士が武器を抜く、弱腰になりながら距離をじりじりと足を進めていく。
「おいこれはチャンスだ、みんなでやっちまおう!」
誰かがそう叫んで大勢の人間たちがこちらへ駆けてくるのが見えた。
「やめてください!」
私は今できる精一杯の声で叫んだ。
「ムートさん、やばいっすよその怪我!」
どこかに隠れていたベルリーがメディーに支えられている私に気が付いて走ってくるのが見える。
しかし私はかまわなかった。
「このドラゴンは呪いの具現化です! ニ、ニーダ……ニーダはどこですか!」
やつの名前を叫んだ。そういえばニーダの仲間の一人の腕が飛んできたのは見たが、ニーダ本人をここで見ていない。
「何言ってんだディーラー風情がそこをどけこいつを討伐して首でも持って帰ればそれで終わりなんだよ」
「だ、だめです、それだけは……ニーダはどこですか?」
「ニーダなんて討伐してからいいだろ、さっさとどけこいつが起きたらどうすんだ!」
「待て、彼の話を聞こう」
活気づく戦士たちの間に割って入った赤魔導士様が回復魔法を詠唱し私の傷口は塞がったが失った血が多すぎた。
「無理に立ってはいけない、ひどいけがだ。白魔導士きみはそのまま体を支えて、そうだ……楽に片膝で……傷口を見せろ、だめだ応急処置だけじゃあぶない」
「赤魔導士様、そんなことよりもニーダは?」
「……彼のパーティーならこの場所に踏み入れた瞬間にドラゴンの攻撃をもろに受けて一瞬のうちにズタボロになって吹き飛ばされたよ。たぶんもう生きてはいない」
「いや、そんなはずはないですよ、だって……」
その攻撃が致命傷になり、命を落としていたら。
――ドラゴンは消えているはずなのだ。
「あいつはまだ生きてます、赤魔道様あいつが、ニーダこそがこの一連の事件の……」
そう言いかけるとほぼ同時だった。赤魔道様の腹部が貫かれ無造作に倒れる。
私たちは悲鳴を上げる間もなかった。
「それ以上余計なことを喋られては困るな。催眠がとけちまう」
見上げる。赤魔導士様の身体を貫かせた武器はさきほどまでドラゴンにとどめをさそうと近づいていた戦士の一人がもっていたものだった。
「あぁぁぁ」
メディーがようやく声を漏らす。
怯える彼女を満面の笑みで眺めている。
「ニーダお前はいったいなんなんだ」
「きみと同じ転生移民だよムート」
まるで誕生日のサプライズ発表のようなそんな口調だった。




