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魔導士ディーラー 影の人
『見えてる。うっすらとだけどあなたの存在は感じてる』
魔力の供給を続けながら私は黒い靄の問いかけに答えた。
『あなたはひどいことをする人ですか?』
黒い靄ははっきりと答え、更なる質問を投げかけてきた。
『違う、私たちはあなたたちを助けたいんだ』
黒い靄は少女の身体から離れ少しずつ実体をあらわにする。
――影の人?
輪郭があるのに顔に目や鼻がない。黒い靄は呪いというより残留思念のような出で立ちだった。
『私は魔導士ディーラームート、彼女は魔導士のメディー、きみは?』
『私はロマンド、でも私だけじゃない他にもいっぱいいるの』
影の人の少女の後方には幾重にも重なった黒い靄が爆発したように空間に広がる。
『みんなは恐れている。私たちを解放してほしい』
影の人の少女の声が心の奥底まで響く。
寒気がするのは傷口が開いたからではなさそうだ。




