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魔導士ディーラー プライド
「メディー頼む」
虫の息に近い私の願いをメディーは素直に頷いてはくれなかった。
「ム、ムートさぁん……ま、魔力のき、供給をやめてくださぁぃ」
何よりも密着したメディーは私の心臓の鼓動や魔力の流れを感じ取っているわけで、私の身体の状態は把握できる。
ドラゴンの攻撃に服は引き裂かれ、露出した肌には深々と傷が刻まれ血が滴り出ている。
極めてまずいのは左わき腹を大きくえぐられてること。この傷は確実に私の命を削っていた。
「メディーあの技を放ってくれ……そうすればあの子は助かるかもしれない」
「む、む、無理ですぅ、詠唱すればム、ムートさぁんは死んじゃいますぅ」
満身創痍の私は、気力、体力の限界は突破している。
たぶんこのまま魔力を注ぎ続ければ死ぬ。
メディーの声は、その現実を物語っていた。
しかし私の答えは揺るがない。その理由は、
「きみは……魔導士だ、一人でも多くの助けを求める者を救うのが仕事だろ」
疲労や激痛すらも超越した微笑み。それから
「それをサポートするのが私の仕事だ」
魔導士ディーラーとしてのプライドだ。




