魔導士ディーラー 反撃を受けるようです。
ドラゴンのでかい身体の陰に隠れていたアルジャノーンが大きく跳躍してその身体を上空へいざなう。狙いはドラゴンの視界を奪うこと。
短い言葉の呪文から炎の球を手のひらから打ち出す。
ドラゴンの右目へ小さな炎球が直撃する。
「どうだい、目の中の水分が蒸発する気分はってあら?」
が、それでもドラゴンの強さは動じない。
つぶれた右目をかばいながら残った左目で確実にアルジャーノンをとらえる。
「こりゃまずい」
身の危険を感じたアルジャーノンはその場から一目散に離脱する。
「ばかこっちにくるな!」
強烈な緊張感、いや圧迫感か。その巨体の影はまさに死神。
雄たけびとともにドラゴンがアルジャーノンにかぎ爪を向ける。
「ディーラーくん、集中を切らすなよ」
「なにっ」
横っ腹に風圧を受け私は真横に吹っ飛んだ。
私をかばうために回避することができなかったアルジャーノンは鋭い爪の一撃を受ける。
「アイリス!」
彼女の身体は、まるでピンポン球のように吹き飛んで結界の壁にぶち当たる。
「アイリス!」
私は何度も彼女の名前を叫んだ。
今すぐにでも駆け寄りたい。しかしこれ以上集中を切らすと結界が崩壊してしまいそうだ。そうなれば結界の内も外も魔物に食われておしまいだ。
「あ、あぶなかったねぇ」
あの攻撃を受けたアルジャーノンが何事もなかったように立ち上がる。
「どうして」
その姿を見た私は思わず声を上げる。普通の人間ならばあんな攻撃くらって生きているわけがない。
驚きを隠せないでいる私にアルジャーノンは口元に笑みを浮かべ当たり前のように呟いた。
「びっくりしすぎだよ。きみらもやってたじゃないか。魔力を消費してダメージを軽減させたのさ。これは便利な技術だ」
楽し気に、それから感心したように言った。