魔導士ディーラー 負担が大きいそうです。
「あの結界の中は外部からの干渉が効かないから時間をかけて倒せるんじゃない?」
最初にアルジャーノンからこの奇策を聞いたときは耳を疑った。
治療用の完全無欠の手術室の空間に敵を囲い込むなんて魔導士ディーラーの私には考えすら思い浮かばない。
「ファイアパンクチャー!」
アルジャーノンは呪文を唱える。手のひらから複数の炎の針がドラゴンの剥げた鱗めがけて飛んでいく。
私の目からは正確にヒットしたと思われたが、攻撃を受けたドラゴンはアルジャーノンに向けて吠えた。
まるで効いていない。しかしそれはドラゴンが打たれ強いというより攻撃事態が弱いとも言えた。
火属性の攻撃において、もっとも基礎的な魔法であるファイアパンクチャーは命中率重視の弱攻撃で最弱モンスタースライムですら一撃では倒せない。
ましてドラゴンはあの巨体だ。もっと火力が高い魔法を使用しなければ埒が明かないだろう。
「おい、全然効いてないぞ」
「だろうね」
アルジャーノンに動揺はなかった。まるで端からこのくらいでダメージなんて入らないと知っていたようだ。
「そんなことよりディーラーくん。きみは結界を崩さぬよう集中することだ」
「なに?」
「長丁場になる。今きみの結界が崩れれば外にいる仲間の安全は保障できないよ」
そうだった。この奇策はとんでもなく私の負担が大きかった。




