魔導士ディーラー 小細工で勝負するそうです
アイリスの身体を確かめるように手のひらを開いて閉じる。アルジャーノンと名乗った人物は能天気に言った。
「俯瞰からなんとなく見てたけど、なんかまずい状況だね」
「そんなことより、アイリスをどこへやった? 彼女は無事なのか?」
「あぁそれは大丈夫。ちょっと眠ってるだけだから。そんなことよりまずはあれをどうにかしないと……ほらあんまり時間に余裕もなさそうだし」
アルジャーノンが微笑みながら周囲に目配せして私たちは危機感を抱く。
取り囲んだ魔物たちがじりじりとこちらへ近づいてきているのだ。
「あれは僕たちが戦闘不能になるのを狙って襲うつもりだよ。弱気になれば今にでも襲ってくる」
「やはり戦うしかないか?」
「それ以外は死だ」
はっきり死と言う言葉を使った。曖昧にしていた事実が矢面に立ったとたん手足の震えだす。
「で、でもぉあんなのとどう戦えばいいんでしょう」
メディーは半べそをかきながら尋ねる。味方の冒険者はドラゴンと戦闘することはおろか低級魔物の相手をするのに手いっぱいだ。
「そうだね、真っ向勝負なら勝てるわけない。だから邪道でいく」
アルジャーノンは私を見つめながら不敵に笑う。身の程知らずの愚か者が強敵と相対し生き残るにはあからさまな小細工を駆使して勝負するしかないのだ。