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魔導士ディーラー 反撃の糸口を探すそうです③
アイリスの心境がよくわからないが、何か秘策でもあるのかもしれない。
圧倒的な力は実際に戦闘したアイリスがよくわかっている。絶対的な力の前に逃げることも許されず立ち向かった冒険者たちも半分ほど戦闘不能にされてしまった。
一介のディーラーである私には正攻法はもとより、この状況を打破する方法も全く思いつかない。
「アイリスあのドラゴンに物理攻撃は効くのか?」
「あの硬いうろこにこいつの刃が入ると思うか?」
こんな時にも質問を質問で返してくるところはらしいが、平然と居合の構えを続けていた彼女は大きく息をはき脱力させたあと立ち尽くす。
「ムートすまない。さっき休んでいた時、魔法石を何個か拝借した」
地面に転がっている木片の残骸を踏みながらドラゴンに向かって歩き始める。
「私のわがままにつきあわせてすまなかった。だが安心してくれみんなは必ず助ける」
アイリスの一歩に迷いはない。彼女はゆっくり刀を腰から抜いた。
「だめっす! 刀を鞘に戻してください!」
ベルリーが声を上げて警告する。しかしアイリスは腰に携えた鞘を空高く投げ捨てた。




