第五話
「はあ、これからどうしょうかなぁ、国外にでも逃げようかなぁ
そうだ!エイダに連絡してみよう」
[エイドリアン•カンピョン公爵令嬢]
シンシアの魔術学校での同級生でもあり唯一無二の親友である。
翡翠の髪にアーモンドアイ、その目は赤い虹彩を放ち、ボンキュボンの体型で、ラノベの悪役令嬢そのものの風貌をしている。
態度も話し方も高飛車だったので、学園ではエイドリアンは、庶民のシンシアをいつもイジメていたと誤解されていた。
『エイダたそ
シンシア大ピンチ!助けて欲しいのであります』
書いた手紙を手紙鳥に変え空に放った。
直ぐ返信が飛んで来た
『オッケーベイビ!カモン』
シンシアは直ちにカンピョン公爵家に向かった。
「シンシア•ジェッタでございます。
前触れも無く急な訪問、大変失礼いたしす。」
「こちらこそ、お嬢様の急なお呼びたてに応じて下さり誠に恐縮でござます。」
エイダは思い立つと直ぐシンシアを呼び付ける。
使用人達は、今日もお嬢様の我が儘に振り回されたのだろう、、と、シンシアの背中を可哀想に見送っていた
エイダの自室に案内されると僅かに扉が開いている
(男性の来客ね)
扉をノックして「シンシアでございます。」と声掛けをする。
「やあ、シンシア嬢 久しぶりだね」
現れたのは、黄色味の強い金の髪を持ち、少し切長の青い目、少し細い顎が優しい雰囲気を醸し出しているが、、、
なかなかこれが獰猛な猛禽類に変わる事がある腹黒王子である。
エイドリアンの前世の推しを実写化したような顔、名前も同じ
『ラインハルト•ベーレンス侯爵令息』
彼は今日も今日とて、愛する婚約者の手作りである肩にゴツめのふさ飾りがついた白いマントを羽織らさせていた。
「エイダ、シンシア嬢がみえたよ」
「少し、待たせておいてくださる?」
エイダの声が隣の衣装部屋から聞こえた。
相変わらずの高飛車振りである。
ラインハルトは長い足を優雅に組み、シンシアの前に座っている
「なあ、シンシア嬢••••
『アリアバート』という名に心当たりはあるか?」
ブファッ 吹いた!
「ゲホ、ゲホッ、何処からその名前を?」
「 前日、私の新しいマントを作るとエイダが言ってな、
『アリアバートの背マントもいいわね!』と、呟いたのだが••••
その様な名を持つ者は貴族年鑑に乗っていないのだよ? 」
( 賢い読者はもうお気付きであろう。
エイドリアン公爵令嬢も転生者
そして 彼女は [ ド ]が付く程の軍服フェチ、そしてコスプレマニア。
前世では田中○樹ファンである )
「それは、、、」
「シンシア、準備が出来たわよ!」
隣の衣装室よりナイトガウンを羽織ったエイドリアンが出て来た。
緑色の彼女の髪は、真っ直ぐおろされ、
足には、黒と黄の混ざったハイソックスを身に付けていた。
そして、頭の上には、小さな円錐形の突起物が2本、左右にちょこんと乗っていた
「エイダ軍曹!これは、まさかの•••」
「「「「 そうだっちゃ!」」」」
エイドリアンは、まるで道端で出会った露出狂のように、勢いよくガウンの前をはだけた。
ガウンの下のその素晴らしい肢体を覆うのは、完成度の高いトラ柄のビキニ!!!
<<<<<ガタン>>>>>
後ろでラインハルトが、鼻血を噴いてひっくり返った
「 ダーリン、しっかりするっちゃ!」
誰もいない室内でも、ラムちゃんになり切ったエイドリアンの演技には、一部の隙もなかった。
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赤いワンピースに着替えたエイドリアンは、意識を失った婚約者を膝枕していた。
「よりによって、貴女が竜王様のツガイだったなんて•••
竜人の愛は重くて執拗なのよ!アナタ、苦労するわよ!」
「愛?あんなの愛じゃないわ!どう見ても家臣か召使いへの態度よ、凄く横柄なのよ!」
「うふふ、ドミドリアン様は俺様だものね!」
エイダは夢見るような顔をした
「でも、ドミドリアン様、ガッシリしているから軍服似合いそうじゃない!
赤いザフト軍の軍服はゴージャス感足りなわねぇ~
ルルージュのは、うーん•••ダメね、イメージ違うわ。
もう一層のこと、シンプルに、デスラー総統もありかも!
ああん、やっぱり、ドミドリアン様は赤よね!!」
「おーい!帰っておいで~」
シンシアはエイダの肩を掴み強く揺さぶった。
「はっ、そうだったわ!今はそんな場合ではないわね。
うちの馬を貸すわ、逃げるんだったら隣国まで行かなくちゃ!
国内だと絶対捕縛されるわよ。
ここに来た事は、ラインハルト様にバレてしまったし•••
明日はからは 大規模な捜索隊が出ると思うのよ
今日のうちに出来るだけ国境近くまで行きなさい。」
エイダは親友の為に、お金とホルモン抑制剤、パン、調味料、etc•••
沢山の品物を準備をしてくれた。
「明るいうちに発ったほうがいいわ!」
「無事逃げ切ってみせるでござるよ。ニンニン!」
シンシアは馬に乗ると、振り向きざまに大きく手を振り 街道を一直線に走り出した。
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目が覚めたラインハルトは、
「エイダが、トラの獣人になってしまった夢を見よ 」
「まあ、面白い夢ですわね、」
「トラの獣人になった君は、とても魅力的だったよ!」
ラインハルトは耳まで真っ赤にして蕩けるような微笑みを浮かべた
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三日三晩かかって国境に辿り着いたが検問所は長蛇の列になっていた。
シンシアは隣のおじさんに聞いてみた
「何で、こんなに混んでいるんですかね?」
「なんでも、凶悪犯のボスが逃げたらしいよ。
それが、なんと若い女だと言うじゃないか!恐ろしいねぇ、、、」
(凶悪犯の、女性を探している?)
「あっ、女性はこちらに並んで下さぁーい」
若い兵士が誘導している。
( 江戸時代の箱根の関所みたい。
入鉄砲に出女、出女は遊女の足抜けだけど、、、まさか、私の捜索?
まさかねぇ、自意識過剰だよね。)
「しっかし、混んでるよなぁ。今日中に通れるかなぁ?」
ふと、列の先頭を見ると、黄色味の強い金髪の、見た事のあるような軍人と目があった
「あ!、まさか、ラインハルト様???」
ヤバっ、タラっと冷たい汗が背中を伝った
シンシアは、ムーンウォークをして、ゆっくり後退る
ゆっくり、ゆっくり、気付かれないように•••
しかし、ラインハルトは、ゆっくり、ゆっくり、長い足を大きく開き、その距離を縮めてくる
お互いの顔が認識出来る距離に近づくと、ラインハルトは、見たことがない様な王子スマイルを浮かべ、口を動かした
「 つ•が•い•さ•ま 」
お互い同時に「今だ!」
シンシアは素早く馬に跨り今来た道を一目散に駆け出した。
ラインハルトも遅れて馬に乗る
「見つけたぞー、追えー!シンシア嬢は街道を反対に向かった、彼女は絶対人族で保護するのだ!急げ!!!」
ラインハルトの号令で、待機していた騎馬隊が一斉にシンシアの後を追って行った。
シンシアは街道を砂煙を立て走り抜き、市街地を抜け山道に入った
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真っ赤な夕焼けが空を染める
「シンシア様ー、出て来て下さいぃぃー」
「シンシア様ぁぁ、、、」
山の中に追手の声が響いている。
このまま夜になれば、暗くなれば逃げ切れるかも•••
シンシアは右に向かって馬を放した
「馬だ、いたぞ、あっちだ、追えーー」
馬と反対方向に音を立てずに進む
時刻も過ぎ、山はすっかりと闇に包また。
ホッホー、ホッホー、フクロウの声がコダマする。
ホッホー、ホッホー、ホッホー、ホッホー
ホッホー、ホッホー、ホッホー、ホッホー
ホッホー、ホッホー、ホッホー、ホッホー
フクロウ多くないか?
目を凝らして周りを見ると、フクロウに囲まれていた。
何故、こんなにフクロウが???
すると、フクロウ達の姿がゆらっと揺れ、その姿を人型に変えた
(、、、獣人だ!!!)
「番様を、発見したぞ、人族には渡すなぁーー」
何よ、何よ、皆んなして•••
一体なんなのよ、もうイヤ
「もう、やめてぇーーーえええ 」
シンシアは耳を押さえ大声で叫んだ
その声に反応して、右方向から声が響く
「シンシア様の声だー!」
「こっちだぁーー」
「探せーー」
右からラインハルト率いるファルス軍
左からフクロウ獣人の竜王軍
シンシアを真ん中に挟み、対立している
誰かが指をパチンと鳴らした
パチン、パッチン、いつの間にか兵士達は、皆、指を鳴らしている。
右と左、お互い指を鳴らし威嚇し合っている。
お前達••••、ウエストサイドストーリーか!
オープニングの指パッチンのシーンが脳内再生され、シンシアは自己逃避を始めた
「もうイヤだ、私、千年の眠りにつく」
シンシアはそう呟くとWindows95の起動音を頭に思い浮かべた。
(ピン ポロローン、ピンピンピン、、、、)
眠りの森の美女を彷彿とさせる薔薇のドームがシュルシュルと出現して、シンシアの体を包み込む
「ああ、次に目覚めたらイーノ様の全盛期に転生してるといるといいなぁ•••」
そう言うと目を閉じ、千年の眠りについた
しかし、眠りの森の美女は王子によって目覚めるのがお約束である
バサ、バサ、遠くから羽尾が聞こえる
ウオォーー 大地を揺るがす咆哮が木霊する
月に照らされ黄金色に輝く竜が、木々を薙ぎ倒し一目散に此方に向かって突っ込んで来た
「皆の者、ご苦労だった」
黄金の竜はそう言うと、バリバリと最も簡単に薔薇のバリアを破り、シンシアを足でガッシリと掴み空に飛んで行った
空を見上げ、唖然とする獣人族の兵士と人族の兵士達
クレーター状にえぐれた山を見て、
「我々は何の為に争っていたのだろう••• 」と、皆が、遠い目をして溜息をついた
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念のために注釈です
ラインハルトは銀河英雄伝
アリアバートはタイタニア
エイドリアンは、金髪腹黒軍服王子が好き♡
作者、調子に乗って趣味に走り過ぎてしまいました
分かりづらい所がありました事をお詫びしたします。
イーノ様はブライアン•イーノです
(Windows95の起動音を作った人)
詳しく語ると止まらなくなるので、興味のある読者さんは検索GO!
m(_ _)m
祝ロキシーミュージック50周年記念でした




